牛肉と馬鈴薯/国木田独歩<あらすじ 要約>

牛肉と馬鈴薯/国木田独歩

明治倶楽部とて芝区桜田本郷町のお堀辺に西洋作りの 立派ではないのですが、

それなりの建物がありました。

この倶楽部が まだ 繁盛していた頃のことです

或年の冬の夜、珍らしく 二階の食堂に あかり が ついていて、時々高く笑う声が外面に漏れていました。

倶楽部では、7人の紳士たちがそれぞれの人生観を語り始めていました。

岡本が倶楽部に訪れたのは、彼らの話が盛り上がった頃でした。

そのうちの1人、上村は、北海道で働いていました。

理想は馬鈴薯 だと彼は言います。

新天地である北海道に渡った彼は、理想と現実の大きなギャップを痛感し、

「理想ばかりでは飯も食えない」と現実主義に転身しました。

ステーキに 馬鈴薯が付いてくるように、理想は現実の付属物である、と彼は主張し、

理想に燃える人を「馬鈴薯党」、現実主義者を「牛肉党」と呼びました。

岡本に話す番が回ってきました。彼はかつて愛した少女とその死について、語りました。

岡本は少女を失った痛みについて触れました

少女の死は僕にとって 大打撃、 どうか少女を今一度 僕の手に返したいのです。

僕は平気で白状しますが 幾度 僕は少女を思うて泣いたでしょう。

幾度その名を呼んで 大空を仰いだでしょう。

実にあの少女の今一度この世に生き返って来ることは僕の願いです。

しかし「真実の願い」少女の蘇生ではなく、別にあると言うのです。

「こいつは面白い、早くその願い というものを聞きたいもんだ!」と綿貫が言いました

岡本は静かに

「びっくりした というのが僕の願いなんです」

「何だ! 馬鹿々々しい!」

「何のこった!」

「落語か!」

人々は投げだすように言ったが、近藤のみは だまって 岡本の説明をまって いるらしいのです。

「即ち僕の願い とは夢魔を振い落したいことです!」

「何のことだか解らない!」と綿貫は つぶやくように言いました。

「人に驚かして貰えば しゃっくりが止るそうだが、

何も平気で居て 牛肉が喰えるのに好んで 吃驚したいというのも物数奇だねハハハハ」

と綿貫はその太い腹をかかえました。

また、この話を理解できなかった 一同も嘲笑しました。

岡本は一所に笑ったが、近藤は岡本の顔に言う可からざる苦痛の色を見て取りました。

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