破 戒/島崎藤村
信州飯山の小学校の先生をしていた瀬川丑松は、父から「被差別部 出身 と言う素性を隠せ」
と戒めを受けていました。
しかし彼の自我は、隠さなければ生きていけない社会の不合理を疑い、苦悩しました。
同じ被差別部落出身の先輩で先進的な思想家・猪子蓮太郎は、堂々と素性を明かして不当な
差別を無くそうと闘っています。そんな蓮太郎を丑松は、尊敬していました。
丑松は自己の偽りに さいなまれ苦悩を深めるものの、告白する勇気を持つことが できません。
その父がなくなりました。 死に際しても「戒めを忘れるな」と言っていたといいます。
父の葬儀の後学校のある飯山に戻ると、丑松の素性を知っているという政治家の高柳が現れ、
学校内では、「教師に部落出身がいる」とうわさが流れたりしました。
丑松は、思いを寄せていた志保に素性を知られるのを恐れ、持っていた蓮太郎の書いた本を全て手離す事にしたのでした。
ところが、飯山で選挙戦が始まると、高柳に対抗する議員の市村弁護士と一緒にやってきたのは蓮太郎でした。
丑松は、自分のことを話そうと蓮太郎を訪ねるが、蓮太郎は反対派に殺されてしまうのでした。
この事件を期に丑松は、父の戒めを破り素性を明かそうと決意するのでした。
丑松は、小学校の生徒の前にひざまづき、真実を隠していた事をわびたのでした。
そして、生徒、友人、志保らは彼への理解を示したが、結局、学校をやめて、蓮太郎の遺骨と共に東京へ向かいました。
さらに、同郷の友人を頼って、新天地 テキサスに旅立っていくのでした。