源氏物語/紫式部 <あらすじ、要約>

源氏物語/紫式部 <あらすじ、要約>

源氏物語は、光源氏(ひかるげんじ)が主人公の 恋愛物語です。
恋愛だけでなく和歌、政治 経済 宗教観なども多く取り入れられているので、時代がよくわかります。

光源氏は、貴公子で  帝(天皇)の子供でした 才能豊かという典型的ないい男性でした。
しかし、光源氏が 最初に惹かれた女性 は母親である 桐壺の更衣(きりつぼのこうい) でした。
更衣 は 天皇に仕える女官のことで天皇の 衣 を替える( 更える )のが主な仕事でした。
身分は低くはないのですが、本来は天皇と結ばれる立場にありませんでした。

光源氏の母である 桐壺の更衣 は光源氏が3歳のときに亡くなります。
ただ、光源氏は母親のことが忘れられず父親の后(妻)であり、母親によく似た藤壺(ふじつぼ) に恋をしてしまいます。

つまり、義理の母親を好きになってしまったわけです。その上、光源氏と 藤壺 は男女の関係を持ってしまい、2人の間に子供が生まれてしまいます。
もちろん、平安時代でも不倫関係は許されず、2人は誰にも言えない秘密をもっていたわけです。

光源氏は、藤壺 に惹かれはするものの 叶わぬ恋 であることは承知しているので、母 桐壺の更衣 と初恋の女性 藤壺 の面影(おもかげ)を求めて、いろいろな女性と恋をしていくというのが大筋の展開になります。源氏物語に登場する女性はすべて何かの欠点(コンプレックス)を持っているのが
物語から読み取れます。

 

源氏物語

<あらすじ>

光 源氏の年齢ごとに どんな出来事があったかを順番に記載しています。

源氏の年齢 —> できごと

□□ 0歳

源氏 誕生。父 桐壺帝 、母 桐壺の更衣。 桐壺の更衣は他の女御(にょうご)から憎まれ、いじめられていた(身分の高さは、妻である中宮 > 女御 > 更衣 の順番です)

源氏物語の冒頭 の文—>

<いづれの御時(おんとき)には、女御(にょうご)更衣(こうい)あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際(きわ)にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。>

—> どなたの御代(みよ 天皇の時代)のことだったか、女御や更衣が多く宮中にお仕えていた中に、それほど高い身分ではないが、特別に帝(桐壺帝)の寵愛(ちょうあい)を受けている方がおられました(桐壺の更衣のこと)。

 

□□ 3歳

桐壺の更衣 が心労により亡くなる。   桐壺帝 は悲しみに暮れる。
桐壺の更衣   —> 桐壺帝 への恋歌 —> (亡くなる直前に詠まれた)

<かぎりとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり>

—> 今日限りであなたとお別れしなければなりません。もっともっと、生きていたかった。

 

□□ 12歳

源氏が元服(成人する)。 藤壺(ふじつぼ) が父 桐壺帝 と結婚(源氏の義理の母となる)。
源氏 は 葵の上(あおいのうえ) と初めての結婚をする。

ちなみに、 源氏 が藤壺 と男女の関係を最初に持ったのはこの頃の可能性があるが、2人が子供を授かるのは2回目に結ばれた 源氏18歳のときである。

源氏 —>   藤壺 への恋歌 —>

<見てもまた 逢ふ夜まれなる 夢のうちに やがて紛るる 我が身ともがな>

—> もう一度逢う(結ばれる)ことがないのなら、いっそこのまま夢と一緒に消えてしまいたい

 

□□ 17歳

源氏 、人妻である 空蝉(うつせみ) と関係をもつが、 空蝉 は 源氏 と逢うことを拒み続け、 源氏は ほかの女性に手を出しまくる。

夏 には 六条御息所(ろくじょうのみやすどころ) のもとへこっそり通うようになり、秋には 夕顔(ゆうがお) のもとに通う。

しかし、 源氏 の不誠実がもとで 六条御息所 は嫉妬に狂い、夕顔 は彼女の生霊(いきりょう)によって殺される。

源氏 —> 夕顔 への恋歌 —>

(夕顔が遠くから源氏をみて あなたが夕顔のように美しいと評判の光源氏なのですね と詠んだ歌に対する返歌)

<寄りてこそ それかとも見め たそがれに ほのぼの見つる 花の夕顔>

—> もっと近づかなければ私が誰かは分かりませんよ。たそがれ時にぼんやりと夕顔の花を見ただけでしょう(実際に逢って確かめましょう)

 

□□ 18歳

源氏 、義母である 藤壺 によく似た女性 紫の上(むらさきのうえ) に出逢い心を奪われる(紫の上 10歳)。

そして4月、 源氏 は計画的に 藤壺 の寝室に押し入り、2人は2度目の関係をもつ。このとき、 藤壺 は 源氏 との子供(冷泉帝 を授かってしまう。

冬、 紫の上 の祖母が亡くなったことを契機に、源氏 は 紫の上を引き取る。

 

□□ ~19歳

源氏 、末摘花(すえつむはな)の琴の音を聞き彼女に興味を持つ。

苦労してなんとか 末摘花 と関係をもつが、のちにあまりに 末摘花 の容姿が醜かったことが分かり 源氏 は後悔する。

夏には 源の典侍(げんのないしのすけ)と関係をもつ。

春には 藤壺 が 源氏 との子を出産し、桐壺帝(源氏の父)は子供の容姿が 源氏 にそっくりなのを喜んだ( 桐壺帝 が 藤壺 と 源氏 の関係を知っていたのかは不明である)

源氏 が 末摘花 を思って詠んだ歌 —>

<なつかしき 色ともなしに 何にこの すえつむ花を 袖にふりけむ>

—> とくに心惹かれる色でもないのに、どうしてこんな末摘花に触れてしまったのか(どうして男女の関係をもってしまったのか)

□□ 22歳

夏、葵祭にて正妻 葵の上 と愛人 六条御息所 の車争い(牛車を止める場所の争い)にて 六条御息所 の牛車が押しやられる。

秋、 源氏 の子を身ごもっていた 葵の上 に 六条御息所 の生霊がとりつき、 葵の上 は息子 夕霧(ゆうぎり)を出産後亡くなる。

冬、 源氏 と 紫の上 が男女の関係になる。

 

□□ 23~25歳

六条御息所 、源氏 と離れるために伊勢に移る(野宮(身を隠す施設)の別れ)。 源氏 の父 桐壺帝 が亡くなり、義母 藤壺 が出家する。

桐壺帝 に変わり兄 朱雀帝 がすでに即位していたが、兄の妻 朧月夜(おぼろづきよ) と 源氏 の密会がバレ、源氏は恨みを買う。

源氏 25歳の夏、のちに絶大な信頼を寄せることになる女性 花散里(はなちるさと) と出逢う。

源氏   —> 六条御息所 への恋歌 —>

<暁の 別れはいつも 露けきを この世に知らぬ 秋の空かな>

—> あなたとの暁(あかつき 明け方)の別れは いつも悲しみの涙で濡れていましたが、今日の朝は これまで経験したことがない 切ない秋の空をしています

 

□□ 26~27歳

源氏 、 朧月夜 との密会以降、都に居づらくなり 紫の上 を京に残し須磨(今の神戸)に移る(都落ち)。

そこで 明石の君(あかしのきみ)と出逢い関係をもち、明石の君 は 源氏 の子( 明石の姫君(あかしのひめぎみ))を身ごもる。

紫の上 —> 源氏 への恋歌 —>

<惜しからぬ 命かへて 目の前の 別れをしばし とどめてしがな>

—> 私の命など惜しくはありません。あなたとの別れを少しでも引き伸ばすことができるのなら~

 

□□ 28~29歳

兄 朱雀帝 が 源氏 を京へ呼び戻す。翌年春、 朱雀帝 が譲位し、源氏 と 藤壺 の子 冷泉帝 が即位する(周囲には父 桐壺帝 と 藤壺 の子と思われている)。

明石の君 が出産し、紫の上 は自分に子供ができないことから嫉妬心を強める。 六条御息所 が亡くなる。 源氏 、末摘花 と偶然再会し、彼女を自分のそば(二条東院)に移住させる。

また、空蝉 とも再会するが彼女は出家する。

 

□□ 31~32歳

源氏 、花散里 と 明石の君 を自分のもとに移住させ、 明石の姫君 は 紫の上 が育てることになる(養女)。

天変地異が続き、 藤壺 が亡くなる。 冷泉帝 が自分の本当の父親が 源氏 であったことを知る。

明石の君 —> 源氏 への恋歌 —> (明石の君 は2年間 源氏にほったらかしにされていた)

<変わらじと 契りしことを 頼みにて 松のひびきを 音(ね)に添へしかな>

—> あなたが約束してくれた、愛する気持ちは変わらないという言葉を信じて、松が風でそよぐ音に 私の鳴き声をまぎらせてずっと待っておりました

源氏が 藤壺 の死を嘆いて詠んだ歌 —>

<入日さす 峰にたなびく 薄雲は もの思ふ袖に 色やまがえる>

—> 夕暮れの峰にかかる薄雲が、悲しみに暮れる私の喪服と同じ色だ

 

□□ 33~35歳

源氏と 葵の上 は息子 夕霧 が元服する。 六条御息所の生霊によって殺された 夕顔 の子 玉鬘(たまかずら)を 源氏 が養女とし、花散里 が育てることになる。

 

□□ 36歳

源氏 は 玉鬘 の婿を探し始めるが、徐々に彼女に惹かれていき、ついに思いを伝える。 源氏 と 玉鬘 は添い寝まではするが、男女の仲にはならず。

紫の上 は2人の関係を不快に思う。

 

□□ 37歳

玉鬘 、源氏 の息子である 冷泉帝 に惹かれ始め、入内(結婚前に側に住むこと)することが決まる。しかし、翌月 髭黒(ひげくろ)が強引に 玉鬘 と関係を持ち、結局2人は結婚することになる。

□□ 39~41歳

朱雀院(源氏の兄)が、娘の 女三の宮(おんなさんのみや)と 源氏が結婚することを認める。

女三の宮  が正妻になったことで 紫の上 は 源氏 の裏切りを感じ深く悲しむ。 夕霧(源氏の息子) の親友である 柏木(かしわぎ) が 女三の宮 をみかけ強い好意をもつ。

紫の上   —> 源氏 への恋歌 —>

<目に近く うつれば変はる 世の中を 行く末遠く 頼みけるかな>

—> 目の前で移り変わっていく こんな世の中でも、私とあなたの愛はずっと変わらないと信じていました(そんな私が愚かだったのですね)

 

□□ 41~47歳

柏木 が強引に 女三の宮 と男女の仲になり、その後 女三の宮 は拒絶するが2人の関係は続く。六条御息所 の死霊が現れ 紫の上 に取り憑き、危篤状態となる。

源氏   46歳のとき、妻の不倫を知り 柏木 への嫌がらせ(イジメ)をするようになる。 柏木 は 源氏の影響で病気になる。

六条御息所(怨霊)   —>   源氏 への恋歌 —>

<わが身こそ あらぬさまなれ それながら そらおぼれする 君は君なり>

—> 私はこんなに あさましい姿になってしまったのに、あなたはとぼけて見せて 昔と変わらぬままですね

 

□□ 48歳

女三の宮 が 柏木との子(のちの 薫(かおる))を身ごもっており、出産する。その後、女三の宮 は出産によるダメージや罪悪感による衰弱から出家する。 柏木
は 女三の宮 の出家を知って絶望し亡くなる。

女三の宮   —> 柏木 への恋歌 —>

<立ち添ひて 消えやしなまし 憂きことを 思ひ乱るる 煙くらべに>

—> 私も煙となって あなたと一緒に消えてしまいたい思いです。そうすれば、どちらが本当につらく思い悩んでいるかもわかるでしょう…

 

□□ 51~55歳

紫の上 43歳で亡くなる。源氏 は悲しみに暮れ、出家を決意する。その後にこれまで愛した女性を訪ねてまわるが心は晴れない。 源氏 、55歳にて亡くなる。

源氏 最後の一句 —>

<もの思ふと 過ぐる月日も 知らぬまに 年もわが世も 今日(けふ)や尽きぬる>

—> 物思いにふけっているうちに 月日の流れも忘れたまま、私の一生も、私の名声も今日で終わってしまうのでしょうね

 

□□    源氏 死亡後の世界

薫 、自分の父親が 源氏 ではなく 柏木 だったと知り思い悩む。

薫 24歳のとき、 大君(おおいきみ) に求愛するが失恋、代わりに妹である 中の君(なかのきみ)を託される。しかし、 中の君 は 薫 のライバルである 匂宮(におうのみや) と結ばれ、 大君 は亡くなる。

薫 は 大君 の死を深く悲しむが、 女二の宮(おんなにのみや) と結婚する。その後 薫 は 大君 によく似た 浮舟(うきふね)に恋をし男女の仲になる。しかし、匂宮 も  浮舟 に惹かれ強引に関係をもつ。

薫 は 浮舟 を責め、 浮舟 は自責の念から入水自殺を図る。 浮舟 が失踪したため、遺体のないまま葬儀が行われる。

薫 と 匂宮 は悲しみに暮れるが、のちに 浮舟 が実は助かっており、出家していたことが判明する。

薫 は 浮舟 を訪ねるが彼女から完全に拒絶され、 薫 はあれこれ思い悩む。

—>ここで 源氏物語 は終わる

 

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