山本 周五郎/赤ひげ診療譚、ちいさこべ<あらすじ 要約>計63冊

山本 周五郎/赤ひげ診療譚、ちいさこべ<あらすじ 要約>計63冊

  あらすじ

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山本 周五郎
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雪の上の霜
山本周五郎の 短編集です。武芸に長けていながら、お人好しな性格のために仕官できず、妻・おたよと共に放浪の旅を続けている浪人・三沢伊兵衛。知り合いになった槍術家・小室青岳の道場を手伝うことになった伊兵衛は、落ち着き場所が・・・・・

馬子たちに駄賃を払おうとしない不埒な若侍たちを、とっちめてしまう伊兵衛でした。貧しい弱い人たちを放っておけない主人公の性分から起きる騒動が興味ぶかい作品です。
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よじょう
山本周五郎の 短編集です。剣術の達人・宮本武蔵に斬り殺された庖丁人・鈴木長太夫の二男・岩太は、借金と不義理を重ねた挙句、家を勘当されて、乞食になってしまいます。「父の仇を討つため、宮本武蔵を討つために乞食になった」と思い込む世間の同情と尊敬によって、蒲鉾(かまぼこ)部屋で・・・・・

思わぬ成り行きで夢をかなえる若侍の姿を描いた喜劇作品です。
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夜の辛夷(こぶし)
山本周五郎の 短編集です。里子(さとご)に出している子供を育てるために、本当は二十四なのに十七だと年齢を偽って客をとったり、客として来た凶状持ちを岡っ引の政次(まさじ)に訴人したりしてまで、懸命に金を稼いでいる岡場所の女・お滝。いつも寝床を二つ敷いて、何もしないで眠って帰ってしまう馴染(なじ)み客の元吉のことを、不思議がりながらも、次第に・・・・・

「あんた まだいちども寝てくれないのよ、今夜だけはあたしのお願いをかなえて、ねえ、たったいちどよ」。お滝と元吉の純愛が美しくも哀しすぎます。。
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若き日の摂津守
山本周五郎の 短編集です。知恵遅れでいつも涎をたらしている藩主・摂津守光辰(みつとき)を露骨に軽侮する重臣たちでした。交代で政治を支配し、横領を続けて来た世襲の重臣たちのせいで、窮乏する住民の姿を目の当たりにした光辰は。精神異常で廃嫡された光辰の兄・光央(みつなか)の真相、不幸な境遇から光辰の・・・・・

「おれはたしかに知能もおくれているし、見るとおり、この年になっても涎をながす、誰の眼にもおろかにみえるだろう  これは少しもよそおっているものではない、だが、初めからこんなふうではなかった、おれはこういう人間になろうと努めて来たのだ」。 自分のしなければならないこと 責任を自覚していく光辰の姿が立派で素晴らしいです。
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赤ひげ診療譚 – 第1話 狂女の話
山本周五郎の 長編集です。第一話。意に反して、患者が貧民だらけの施療院「小石川養生所」の見習医にされてしまった長崎帰りの保本登(やすもと・のぼる)は、やり方は手荒く、言葉も乱暴な医長・新出去定(にいで・きょじょう、赤ひげ)・・・・・

入院中の狂女・おゆみの世話をしているお杉と親しくなった登は、殺人淫楽症になったおゆみの過去を知ります。精神的外傷(トラウマ)を扱ったホラー・ミステリー作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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赤ひげ診療譚 – 第2話 駆込み訴え
山本周五郎の 長編集です。第二話。蒔絵師だった老人・六助の死に立会った見習医・保本登は、六助の一人娘である おくにが、三人の子供を残して、入牢していることを知ります。恩賞めあてにやくざ者の夫・富三郎を訴人した彼女でしたが、人倫にそむく・・・・・

あまりに悲痛すぎるおくにの身の上を聞いた医長・新出去定(赤ひげ)でした。
「人生は教訓に満ちている、しかし万人にあてはまる教訓は一つもない、殺すな、盗むなという原則でさえ絶対ではないのだ」。赤ひげの 行為 が素晴らしく、感動を覚える作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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赤ひげ診療譚 – 第3話 むじな長屋
山本周五郎の 長編集です。第三話。極端に貧しい人たちが住んでいる「むじな長屋」。労咳(ろうがい)で余命いくばくもない職人・佐八を診療する保本登は、佐八が自分の養生のための食料や薬を、長屋の人たちのために貢(みつ)いでいることを知ります。なぜか彼は 自分を犠牲に・・・・・

数十年前に別れた妻・おなかとの凄絶な愛でした。「もうすぐにおれもいく、もうまもなくだからな、ああ、そうだとも、もうそんなに待たせやあしないよ」。大火によって運命が大きく変わってしまう展開は、涙が止まらない作品です。
歴史小説のおもしろい作品です
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赤ひげ診療譚 – 第4話 三度目の正直
山本周五郎の 長編集です。新出去定(赤ひげ)に命じられ、気鬱(きうつ)症になった大工・猪之(いの)を診察する保本登。「嫁に貰いたい女がある」といって兄弟子の藤吉に頼んでおきながら、縁談がまとまると逃げ出してしまう猪之でした。そんなことを何度も繰り返した末に、気が変・・・・・

「九つぐらいでこんなことを知ってる、女なんておっかねえもんだ、ひでえもんだって」。女に好かれながら、いつも受身だった男の精神的外傷(トラウマ)を明るくユーモラスに描いて興味ぶかい作品です。第四話。歴史小説のおもしろい作品です
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赤ひげ診療譚 – 第5話 徒労に賭ける
山本周五郎の 長編集です。第五話。娼家(しょうか)街へ外診に行く新出去定(赤ひげ)と保本登。劣悪な環境の下で働かされている哀れな女たちを診察して回りますが、岡場所の用心棒をしている若い男たちに取り囲まれてしまいます。「この世から背徳や罪悪を無くすることはできないかもしれない。しかし、それらの大部分が貧困と無知からきているとすれば、少なくとも貧困と無知を・・・・・

“自分の一生を徒労に打ち込んでもいい”という赤ひげの信念が素晴らしく、赤ひげの言葉が心に響く作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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赤ひげ診療譚 – 第6話 鶯ばか
山本周五郎の 長編集です。第六話。俗に「伊豆さま裏」と呼ばれる、松平伊豆守の屋敷裏の一帯の長屋に住む貧しい人々。見えも聞こえもしない鶯の囀りを聞いて過ごす十兵衛、近所に揉めごとを起こす、ふしだらで恥知らずな元遊女・おきぬ、殺鼠剤をのんで一家・・・・・

保本登と五郎吉の子供・長次との交流に涙。貧困の問題を考える作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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赤ひげ診療譚 – 第7話 おくめ殺し
山本周五郎の 長編集です。第七話。家主・高田屋松次郎による突然の立ち退き命令に反発する長屋の人々。先代の与七との間で「松次郎の代まで長屋を無償で貸す」という約束があったといい、それを松次郎は反故(ほご)にしたのでした。そもそも、どうして「店賃なし」などという約束が交わされたのか   長屋の若者たちから、あることの・・・・・

“おくめ殺し”の意外な真相を描いたミステリー作品です。ユーモラスな収束がお見事です。歴史小説のおもしろい作品です
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赤ひげ診療譚 – 第8話 氷の下の芽
山本周五郎の 長編集です。第八話。妊娠した白痴の娘・おえいの子を堕してほしいと養生所にやって来た母親のおかねでしたが、おえいは子を産むといってききません。おえいの境遇(親のくいものになる子供の不幸)を・・・・・

赤ひげとの交流や養生所での経験によって、婚約者にそむかれたつらい過去を克服し、立派な人間に成長していく青年医・保本登の姿を描いたものです。「貧富や境遇の善し悪しは、人間の本質には関係がないと思います」。感動のラストシーン 青春小説  最終話
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秋の駕籠
山本周五郎の 短編集です。駕籠(かご)屋の相棒同士である中次と六助。普段は実の兄弟よりも仲が良いのに、いつもつまらないことで喧嘩してしまいます。またもや喧嘩して、なかなか仲直りできないでいる二人は、行きつけのめし屋「魚金」の娘・お梅から、相棒の・・・・・

「六助はおれの友達だ、おれの友達のことを悪く云うつもりか」、「中次はおれの友達だからな、おれの前で友達のことを悪く云うのはよしてもらいたいんだ」。箱根まで客を乗せて行く顛末を描いた後半も、まるで落語のようで興味ぶかいです。友情を描いた喜劇作品です。
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葦(あし)は見ていた
山本周五郎の 短編集です。中老の家格である藤吉家の一人息子・計之介は、父の葬儀で江戸へ行った時、芸妓・おひさと出会い、愛し合うようになります。婚約者(友人・杉丸東次郎の妹・深江)がいるにもかかわらず、おひさとの愛に溺れ、どん底まで墜ちてしまった計之介でしたが、東次郎の友情によって・・・・・

主人公の極端な変容を描くことで、人間の本質を浮き彫りにした作品です。   歴史小説のおもしろい作品です
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あだこ
山本周五郎の 短編集です。婚約者の金森みすずに逃げられてからというもの、出仕もせず、すっかり自暴自棄になり、遂には食べる物もなくなり、もはや餓死するしかないところまで落ちぶれてしまった旗本・小林半三郎でした。そんなある日、色の黒い見知らぬ田舎女・あだこがやって来て、半三郎の身・・・・・

これは友人・曾我十兵衛の差し金に違いないと考えた半三郎は、無気力な生活を続けるのでした。 “生きようとする力”の偉大さ・絶大さを描いた感動の再生物語作品です。涙があふれる小説です。
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雨あがる
山本周五郎の 短編集です。武芸に長けていながら、謙遜柔和な性格が災いして、なかなか仕官できずにいる浪人・三沢伊兵衛。長い放浪生活の苦労で、すっかり窶れてしまった妻・おたよのことを心苦しく思います。果し合いをする侍たちを、いとも簡単に仲裁してみせた伊兵衛は、藩の老職の目に・・・・・

貧しい安宿の客たちに喜びと望みを与える伊兵衛と、そんな伊兵衛を立派だと信頼するおたよが素晴らしいです。
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糸車
山本周五郎の 短編集です。実家が困窮していたため、依田家に貰われて育ったお高。寝たきりの養父・依田啓七郎と幼い弟・松之助の面倒を見ながら、糸繰りの内職をして家計を支えている彼女は、貧しいながらも幸せに暮らしていました。出世して裕福になった実家の生みの母・お梶が重病だと知らされ、・・・・・

「大きくなればわかるだろうが、姉上はこの父やおまえのためにせっかく仕合せになれる運を捨てて呉れたのです  忘れては済まないぞ」。普遍的ストーリーに感動の涙です。
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嘘アつかねえ
山本周五郎の 短編集です。陰気くさい、ひどくうら寂れた下町の横丁。無愛想な爺さんが出す屋台「やなぎ屋」の常連客になった信吉は、屋台にやって来る暗い重苦しいかげをもった客たちとの交流を通して、人生の悲哀というものを痛感します。
「嘘アつかねえ」が口癖の男・松は、気の弱い父親が、気の勝った母親に罵られる姿を見て育った話をし、「女は・・・・・

「おまえの云うとおりだよ、松さん、いいから酔おう、酒だけはおれたちを騙さねえからな」。
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大炊介始末
山本周五郎の 短編集です。十八歳の時、侍臣を手打ちにして以来、まるで人が変わってしまった藩主・相模守高茂の長子・大炊介(おおいのすけ)高央。酒に酔って乱暴を働き、女をさらい、商人を斬り。このままでは藩の大事になるため、やむなく大炊介を討ち果たす命が下されます。大炊介の元学友・柾木兵衛は、討手の役目を自ら願い出て、・・・・・

寵愛を受けた父・相模守の「意思」によって自分を「始末してもらう」ことです  二人のおおいなる友情が素晴らしく感動的です。
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おたふく
山本周五郎の 短編集です。腕は一流でしたが、酒好きの彫金師・貞二郎。自分のことをのろまのおたふくだと卑下する縹緻(きりょう)よしのおしずと結婚した貞二郎は、いつも側で面倒を見たがる彼女のことをいとおしく思うようになります。しかし、貞二郎が得意先の「鶴村」におさめた品や、高価な男物の着物が、おしずの箪笥(たんす)の中から出てきたことから、貞二郎はおしずと「鶴村」の・・・・・

「姉さんは恥ずかしかったのよ、姉さんは、姉さんは、あなたが好きだったからよ」。三十六まで結婚しなかった  おしずの一途でいじらしい生き方に自然と涙がでます。
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落葉の隣り
山本周五郎の 短編集です。同じ長屋に住む同い年の参吉と仲良くなった少年・繁次(しげじ)。思いやりがあって、頭もよく、一流の職人を目指している参吉のことを尊敬してやまない繁次でしたが、向かいの長屋に住む幼なじみの少女・おひさと参吉が薪小屋の前で抱き合い、唇を吸い合っているところを目撃してしまい、ショックを受けます。「おひさは昔から参吉のことが好きだった。わかっていたことだ」と自分を・・・・・

「こういう気持がわかるようになるには、学問も金もいらないからねって」。思い通りにならない人生と愛情の問題を描いて哀感の青春作品です。
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おもかげ抄
山本周五郎の 短編集です。愛妻家ゆえに、買い物も洗濯も何でも自分でしている浪人・鎌田孫次郎に、付いたあだな は「女房に甘次郎」。剣術者である孫次郎に、息子の稽古を頼んだ藩の大番頭・沖田源左衛門でしたが、孫次郎から、実は妻・椙江(すぎえ)は三年前に死んでいたことを知らされ、驚きます。妻の死を受け入れることができない孫次郎は、妻がまだ・・・・・

孫次郎に仕官をすすめる源左衛門でした。「お待ち申して居りました」、「何誰(どなた)でござるか、」。亡き妻に誠を尽くす主人公の再生物語作品です。
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かあちゃん
山本周五郎の 短編集です。一家六人が稼いで金を溜め込んでいるという噂を聞き、お勝の家に強盗に入った若い男・勇吉。そんな彼にお勝は、「けちんぼ一家」だと近所に揶揄されながらも、一家が貧乏しながら辛抱づよく稼いでいる意外な理由を話します。「またおばさんに叱られるかもしれねえが、おらあこのうちの厄介になってから、初めて本当の親きょうだいと暮すような気持になれた、ほんとなんだ、叱られてもいい、おれにはおばさんが本当のおっ母さん、みんなが本当の・・・・・

他人の世話を焼くために苦労をいとわない一家の姿を、絵空事だと片付けることはできないのです。何かとてつもない感動を覚える衝撃作品です。
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金五十両
山本周五郎の 短編集です。馬喰町の太物問屋「近江屋」の奉公人だった宗吉でしたが、十年かかって溜めた金を叔母に取られ、手代の清吉に騙され、店をクビになり、恋人・おたまにも裏切られ、すっかり世の中に絶望し、自暴自棄になってしまいました。一文無しで浜松の旅館「柏屋」に泊まった宗吉は、宿の女中がしら・お滝の・・・・・

見ず知らずの若い武士から、頼まれた所まで届けてほしいと五十両という大金を渡された宗吉は。「金じゃあない、金じゃあないんだ」。世の中の広さ、人間の生き方の深さを描いて心に沁みます。
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五辧の椿
長編。
薬種問屋「むさし屋」の婿養子として苦労した末に病死した父・喜兵衛を哀れに思う娘・おしのは、不行跡で淫蕩な母・おそのを憎み、家に火をつけて、おそのを焼き殺してしまいます。
「お父つぁん、あたしに力を貸して」
喜兵衛の恨みを晴らすため、おそのと関係のあった性悪な男たち(法で裁かれない悪人ども)を、色仕掛けで次々と殺害していくおしの。凶器は、銀の平打(ひらうち)の釵(かんざし)、死躰の枕許には赤い椿の花びら。町方与力・青木千之助の捜査が迫り来る中、最後の一人を・・・・・

「十八歳」という年齢の純粋な潔癖さがなければとうてい成し得なかった特異な事件を描いた異色の犯罪小説です。女主人公の悲壮さに涙が出る作品です。
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こんち午の日
山本周五郎の 短編集です。豆腐屋の婿になった塚次でしたが、不行跡の妻・おすぎは、祝言して三日めに男と出奔してしまいます。「いまにきっと戻って来ると思うが、そのときおまえはどうします」、「それは、」。きまじめで働き者の塚次は商売に精を出すが、ならず者に因縁をつけられ、得意先も減ってしまいます。商売敵の嫌がらせにしては度が過ぎていると・・・・・

困難に目を背けず、対峙する主人公の姿に感銘を受けます。題名の「こんち午(うま)の日」の意味が判るエピソードも素晴らしいです。
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さぶ
長編。
賢くて仕事ができ、女にもモテる栄二と、愚図でのろまでしたが、どこまでも気の優しいさぶの友情物語です。
経師屋「芳古堂」の職人・栄二は、得意先の両替商「綿文」の主人の「金襴の切(きれ)」を盗んだという濡れ衣を着せられてしまいます。自暴自棄になった栄二は、無宿人として、石川島の「人足寄場」に送られてしまいます。
「世の中には賢い人間と賢くない人間がいる、けれども賢い人間ばかりでも、世の中はうまくいかないらしい、損得勘定にしても、損をする者がいればこそ、得を・・・・・

誰が何の目的で「金襴の切」を栄二の道具袋に入れ、無実の罪を着せたのか   推理小説の要素も盛り込みながら、飾り気のないまっすぐな二人の友情を感動的に描いた時代小説です。よんで損はない作品です
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寒橋(さむさばし)
山本周五郎の 短編集です。夫・時三のことを愛してやまない袋物屋「田代」の娘・お孝(こう)でしたが、女中・おたみが暇を貰って実家に帰ったのは、時三との子を身ごもったからだと分かり、非常なショックを受けます。病気で死の淵にある父・伊兵衛から、意外な・・・・・

「約束だから、この話は、おまえの胸ひとつにしまっておいてくれ、わかったな」。夫婦の愛情の問題を描く。ラストのせりふ  に真実味のない白々しいものを感じてしまうのは、私がひねくれ者だからかな
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三年目
山本周五郎の 短編集です。大工の親方・伊兵衛の遺言で、親方の一人娘・お菊と夫婦になる約束ができていた大工職人・友吉(ともきち)でしたが、上方(かみがた)へ行っている三年の間に、お菊は弟分の角太郎と一緒になり、深川へ引っ越してしまったことを知ります。長雨による洪水で町じゅうが大騒ぎになる中、匕首(あいくち)を・・・・・

洪水と友情の取り合わせが絶妙です。感動、愛情、友情の物語ですぐれた作品です。
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しじみ河岸
山本周五郎の 短編集です。恋仲だった若い左官・卯之吉を殺した罪で逮捕された二十歳の娘・お絹。「この娘は下手人ではない」という直感が働いた吟味与力・花房律之助は、再吟味に乗り出します。しかし、お絹は自分が殺したと言い張り、長屋の人々も事件について口を噤み、捜査は難航します。中風で寝たきりの父・勝次と・・・・・

事件の意外な真相(格差社会の弊害)を描いた時代推理の秀逸作品です
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失蝶記
山本周五郎の 短編集です。「少年時代からのたった一人の友、もっとも信じあった友を、こんなふうに自分の手で殺した。耳さえ不自由でなかったら」。親友である杉永幹三郎の婚約者・紺野かず子に恋慕した青年藩士・谷川主計(かずえ)が、恋の恨みで杉永を闇討ちにしました。

そう噂された事件の意外な真相は藩論を王政復古に纏(まと)めるため奔走する主計や杉永たちでしたが、大砲の発射事故で主計は失聴してしまいます。やむなく隠居していた主計は、佐幕派の真壁綱を暗殺する役目を買って出ます。幕末という時勢の複雑さが生んだ悲劇作品です
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霜柱
山本周五郎の 短編集です。藩の老職・繁野兵庫の小言に腹を立てる郡代支配の次永喜兵衛。しかし、繁野が自分に厳しく接するのは、自分を子供のように好いているからだと知ります。繁野には勘当した放蕩息子・義十郎がいた。「自分で悪いことをしておきながら、その責任を人に背負わせようとする、なにより恥知らず・・・・・
不肖の息子を持った親のケジメの付け方を描いて印象に残ります。
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饒舌り過ぎる
山本周五郎の 短編集です。無二の親友である長島藩の青年武士・小野十太夫と土田正三郎。いつも同じ娘に恋をしてしまい、娘のほうでもどっちが好きか判別がつかなくなるほど、二人は一躰同様でありました。互いに妻帯し、子供も生まれ、三十二歳になった二人でしたが、十太夫が吐血して倒れ、死んでしまいます。
奇妙で最上な友情物語。饒舌な十太夫が無口な土田に言う口癖「おまえは饒舌(しゃべ)り過ぎるぞ」が興味ぶかいです。
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十八条乙
山本周五郎の 短編集です。藩内抗争で重傷を負った妻・あやの従兄(いとこ)・井原友三郎を介抱し、逃亡に手を貸した西条庄兵衛でしたが、その科(とが)で・・・・・

。時は経ち、藩政が改新され、井原が中老になったと知った庄兵衛は、これで赦免になると喜ぶが。自分の不注意で妻に火傷を負わせてしまった過去があります。最上の夫婦小説作品です。
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修行綺譚
山本周五郎の 短編集です。明るく活発な性格で、学問もでき、武芸に長け、力持ちでもある青年藩士・河津小弥太(こやた)。しかし、自制心や克己心がまったくないため、誰かれ構わずに、張り飛ばしたり、投げ飛ばしたりすることもしばしばでした。それが原因で、婚約者の伊勢との祝言もずっと・・・・・

剣術の神様といわれる一無斎老人のところへ修行することになった小弥太でしたが、散々こき使われ、毎日のように災厄が降りかかってきます。オチが興味ぶかいユーモア小説です、人間の本質を描いていて素晴らしい作品です。
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末っ子
山本周五郎の 短編集です。「あいつはあまったれの末っ子だ」と一族から言われて育った七千二百石の旗本の三男・小出平五。御家人の株を買うため、子供の頃からせっせと金を溜め込んでいる平五は、骨董(こっとう)の目利きという特技を活かして、骨董道楽の父親・玄蕃(げんば)の鼻を・・・・・

貧窮した武家の娘・細江みのに求婚するラストが感動です。末っ子魂(だましい)で幸福を掴む青年の姿を小気味よく描いた傑作作品です。物語が大きく展開し感動します
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墨丸
山本周五郎の 短編集です。藩の重臣・鈴木家に引き取られた少女・お石。色の黒い彼女に“墨丸”というあだ名を付けて、妹のように可愛がる鈴木平之丞でした。美しく成長したお石に求婚する平之丞でしたが、彼女は「わたくし琴で身を立てたいと存じます、生涯どこへも嫁にはまいらないつもりでございますから」と・・・・・

「私は五十歳、あなたも四十を越した、お互いにもう真実を告げ合ってもよい年ごろだと思う、お石どの、あなたはどうしてあのとき出ていったのか」。“翡翠(ひすい)の文鎮”に秘めた想いが心に残る感動作品です。
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その木戸を通って
山本周五郎の 短編集です。城代家老・加島大学の娘・ともえとの縁談が進行する中、見知らぬ若い娘の訪問を受けた平松正四郎でした。正四郎を訪ねてきた理由も、自分が何者であるかも、何も覚えていないという娘。縁談をこわそうとする者の嫌がらせに違いないと考えた正四郎は、娘を追い出し、そのあとを跟(つ)けるが。「いまおまえは昔の・・・・・

「いいえ。わたくしこのままで仕合せですの、昔のことなど思い出したくはございません」。おとぎ話のような幻想的な結末が印象に残る作品です。
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ちいさこべ
山本周五郎の 短編集です。大火で家が焼け、両親を亡くした神田の大工「大留(だいとめ)」の若棟梁(わかとうりょう)・茂次(しげじ)。自分の力で店を再建したいと意気込む茂次は、両親の葬式も出さず、同業の支援も断わって、仕事に精を出します。
住み込みで店を手伝う幼なじみの おりつが、火事で孤児になった子供たちを集めて面倒を見ていることに、当初、反対だった茂次でしたが、次第に受け・・・・・

自分に色目を使うようになった孤児の菊二のことを、いやらしいと感じて警戒する おりつでした。「あたしのほうがみだらですって」 ぶっきらぼうだが心優しい茂次と、勝気で多感な年頃のおりつとの交流が心暖まる感動作品です。
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ちゃん
山本周五郎の 短編集です。流行遅れで売れなくなった、手間ひまのかかる「五桐火鉢」から、時勢に合った安くて売れる火鉢に乗り替えるべきだと、昔の同僚たちから言われた火鉢職人・重吉でしたが、職人の意地もあり、当世向きの仕事ができません。これ以上、女房のお直や四人の子供たちに迷惑をかけたく・・・・・

十四になる良吉、十三になる娘のおつぎ、七つの亀吉と三つのお芳感涙の家族小説作品です。
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偸盗
山本周五郎の 短編集です。「酷薄無残で血も涙もない大ぬすびと」だと豪語している偸盗(ちゅうとう)の鬼鮫でしたが、裏腹にいつもドジな失敗ばかりしています。中将の姫君である十五歳の少女・品子を身代金目的で誘拐しますが、彼女は男好きで大食いで大酒飲みのとんでもない不良むすめでした。
「男ならちっとは男らしくしろ、なんだ意気地のねえ、こんなことで・・・・・

さあ、温和(おとな)しくあちしの云うとおりにしな、これをこうするんだってばさ、こう」。貴族の頽廃を嘆くお人好しな盗人を描いて興味ぶかい作品です。誘拐事件の意外な顛末も笑えます。
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泥棒と若殿
山本周五郎の 短編集です。継嗣問題に巻き込まれ、廃屋に幽閉されてしまった若殿・成信。餓死するか暗殺されるかの運命しかなくなった成信でしたが、そこへ何の事情も知らない泥棒・伝九郎が現れます。成信の惨状を見た伝九郎は、工事現場で働いた金で、成信の食事の・・・・・

伝九郎の親切に 成信は人間らしく生きるとはどういうことかを知ります。人それぞれが果たすべき責任とは   「いちどぐらいは、おれが煮炊きをして、伝九に食べてもらいたかった、おまえには ずいぶんながいあいだ、世話になったから」。感動で涙が止まらない作品です。
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長屋天一坊
山本周五郎の 短編集です。天一坊(てんいちぼう)事件に影響され、長屋の中にも天一坊のような人物がいるに違いないと考えた「六軒長屋」の家主・縄屋吾助。そんな吾助を迷惑に思う駕籠舁(かごか)きの銀太と金太は、偽の書付と短刀を用意して、吾助をだましにかかります。乞食の若者を大名の落胤(らくいん)だと・・・・・

「本物の天一坊は偽者で、偽者の天一坊が本物だってよ。こいつあとんだ事になった」。はちゃめちゃすぎる展開が興味ぶかいドタバタ喜劇です。
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並木河岸
山本周五郎の 短編集です。三度目もまた流産してしまった妻・おていに冷淡な態度を取る船大工の鉄次。なかなか子供ができないことで、夫婦仲がこじれる中、鉄次は居酒屋の女・お梶と出会います。少年時代の鉄次のことをよく知っているというお梶とすっかり気が合った鉄次は、彼女と川崎へ・・・・・

鉄次とおていが逢曳していた深川の並木河岸の思い出、親に捨てられた子供・長吉との心の交流。「ねえ、見てごらんたら、小父(おじ)ちゃんちの小母(おば)ちゃんが来たよ」。素晴らしい最終場面に感涙します。時代小説 です
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なんの花か薫る
山本周五郎の 短編集です。泥酔して喧嘩沙汰を起こした若侍・江口房之助を匿(かくま)ってやった遊女・お新。「おれは本気なんだ、本気なんだよ、お新」。刀を棄てる覚悟だという、初心(うぶ)で真面目な房之助のことを、本気で好きになってしまったお新でした。そんな彼女を応援し、夢を託す岡場所の・・・・・

「あたしたち、こんなしょうばいをしているけれど、それでも、同じ朋輩の中から、お侍の奥さまが出るっていうぐらいの夢は、持ちたいと思うわ、あたしたちだって、そのくらいの夢は持ってもいいと思うわ」。遊女たちの悲哀を描いた優秀作品です。
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二十三年
山本周五郎の 短編集です。会津藩の改易によって浪人となってしまった新沼靱負(ゆきえ)。妻・みぎはと長男・臣之助を相次いで亡くし、幼い次男・牧二郎を抱え、窮迫する彼は、仕官の望みのある松山藩へ行くことを決意します。やむなく婢(はしため)のおかやに暇を出すが、彼女は崖から墜ちて頭を打ち、・・・・・

望み通りにおかやを伴れて松山へ行くことにした靱負でした。「今日まで二十三年、新沼の家のためにおまえの尽して呉れた事は大きい、牧二郎が今日あることはみんなおまえのおかげだ、有難う」。劇的な結末に涙をながす作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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日日平安
山本周五郎の 短編集です。一食の銭を得るために、切腹のまねをしなければならないところまで逼迫した浪人・菅田平野でした。道で出会ったある藩の侍・井坂十郎太が、まもなく城代家老の婿養子になること、藩の悪政を正すために奸臣誅殺を計画していることを知った菅田は、十郎太を唆して、仕官を・・・・・

敵に拉致された城代・陸田(くがた)精兵衛を救う方法とは
「いまは軍師の位置についたのだ、あとはこのへぼ頭からどれだけの知恵が出せるか、しかもごく短時間のうちに、これが問題だ、。侍の良心と大義名分をユーモラスに描きます。歴史小説のおもしろい作品です
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人情裏長屋
山本周五郎の 短編集です。道場破りを稼業としている浪人・村松信兵衛。いつも酔っ払っているが、困っている者の面倒を見ずにはいられない性格で、裏長屋の人々から「先生」と慕われています。若い浪人・沖石主殿が棄てていった乳呑児(鶴之助)を、自分の手で育てると決意した信兵衛でした。酒をやめて、隣家の老人の孫娘・おぶんに・・・・・

「鶴坊を返すのは厭です、あたしだって抱いたり寝かしたりしますんですから、どんなことがあったって返しゃしません、厭です先生」。素晴しいラストに目頭が熱くなる作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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野分
山本周五郎の 短編集です。新庄藩の若侍・楢岡又三郎。実は藩主の庶子である彼は、自分の意に反して、世継ぎ問題に巻き込まれてしまいます。孫娘・お紋と二人で暮らしている老人・藤七の家を繁々訪ねるようになった又三郎は、貧しくても自分らしく自由に生きる町人の暮らしに憧れを抱くようになります。そして 武士をやめて、お紋と一・・・・・

武家の役割、江戸っ子の意地を描いて深く心に残る作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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橋の下
山本周五郎の 短編集です。「もう考える余地はないじゃないか、これでいよいよけりがつくんだ、もうなにも思い惑うな、なんにも考えるな」。ある決意のもとに河原へやって来た若侍は、橋の下で暮らす乞食の老夫婦を見かけます。四十年前、一人の娘を得るため、果し合いで親友を斬り、その娘と一緒に藩を出奔した老人の身の・・・・・

「はたし合を挑む ほかにやりかたはなかったろうか、どうしても娘を自分のものにしなければならなかったのだろうか」。人生の先輩が得た教訓を若者が活かす姿を描いた素晴しい作品です。
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晩秋
山本周五郎の 短編集です。岡崎藩主の用人として、冷酷・専断な政治を行った罪を問われ、裁かれる身となった老人・進藤主計(かずえ)の身の回りの世話を命じられた都留(つる)。実は都留にとって主計は親の仇でした。都留の父・浜野新兵衛は、主計の暗殺に失敗して切腹させらました。母の遺愛の懐剣で主計を・・・・・

「今こそ父上さまも御成仏あそばしましょう、そして今日まで都留の心の弱かったことを、父上さまのおみちびきだったと存じてもよろしいでしょうか」。為政者の覚悟と責任を描き 大きな感動がきます。歴史小説のおもしろい作品です
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ひやめし物語
山本周五郎の 短編集です。町でよくすれ違う佳人を見初めた柴山家の暢気な四男坊・大四郎でしたが、部屋住の身では嫁を貰うわけにいかず、自分の立場を思い知ります。ひょんなことから藩の中老・中川八郎兵衛に気に入られ、婿入りの好機を得るのです。
「お母さん、私も二十六になってしまったんですね」、「そうですよ。それが・・・・・

「ついこないだ気がついたんですが、さもなければまだ気がつかなかったかも知れません」。道楽の古本集めから、思いがけず人生の幸福を掴む青年武士の姿を描いた喜劇作品です。
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山本周五郎の 短編集です。嫂(あによめ)の純子が住む須磨の家の離屋に、もうふた月も滞在している青年・久良(くら)正三。動物園の豹(ひょう)が逃げ出し、犠牲者も出るなど、近所で大騒ぎになる中、正三は純子から、二年前に自殺した兄の真相を聞かされ、驚かされます。次の日の深夜、正三は純子の気配を感じて、・・・・・

「どうしました」、「いま裏のほうで妙な音がしたんです。豹が来たのじゃないかしらと思って」。題名の「豹」の本当の意味がわかる“オチ”が、とっても怖くて、とっても興味ぶかいです。本物のホラー小説です。
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風流化物屋敷
山本周五郎の 短編集です。化物屋敷として有名な「柘榴屋敷」に引っ越してきた若侍の御座(みくら)平之助。夜中に幽霊たちが物音を立てて、平之助の睡眠を妨害しますが、のんびり屋の平之助は、まったく意に介さず、逆に彼らの方が肝を潰す始末でした。化物屋敷に興味津々な隣人の娘・とみ嬢は、そんな平之助の態度にいたく・・・・・

「これは火傷(やけど)なんかじゃありませんよ」、「腫物(はれもの)ですか、面疔(めんちょう)というやつですね」、「一つ目小僧ですよ」。化物たちの意外な正体と、乙女の母性本能くすぶる興味ぶかい喜劇作品です。
歴史小説のおもしろい作品です
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へちまの木
山本周五郎の 短編集です。婿養子に出されるのが嫌で家出した千二百石の旗本の三男・池原房二郎。瓦版屋・文華堂の記者・木内桜谷と知り合いになった房二郎は、文華堂で働き始めますが、悪質な拵え話やあくどい記事ばかりの卑しい仕事に嫌気が差します。お互いに化かし合っている文華堂の主人夫婦、房二郎の世話を焼き・・・・・

「へちまは木にはならねえ、か、僻んで考えると、おれのことを云われたみたようだな」。世間の実態と青春の挫折を描きます。女がもとで芝居の作者になり損なった桜谷の人生の悲哀が象徴的です。歴史小説のおもしろい作品です
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法師川八景
山本周五郎の 短編集です。側小姓・佐藤又兵衛という許婚者(いいなずけ)がいながら、藩侯の一門に列している久野家の息子・豊四郎と恋仲になり、子を身ごもった書院番頭・伊田勘右衛門の娘・つぢでしたが、豊四郎は急死してしまいます。久野家の嫁と認められず、勘右衛門からも見放された彼女は、隠居生活を強いられます。信念のもとに子を産んだ つぢは、思いがけず・・・・・

「どうぞお願いですから、もうここへはおいでにならないで下さいまし」、「いや、ときどき来ますよ」。女主人公の確とした姿が立派で素晴らしく、ラストシーンも最高です。歴史小説のおもしろい作品です
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ほたる放生
山本周五郎の 短編集です。この声でくどかれると、あたしはすぐ ばかみたようになってしまうんだわ。甲斐性なしの情夫・村次のせいで、江戸じゅうの岡場所を転々としてきた遊女・お秋は、船宿の若い船頭・藤吉の熱心な求婚も断ってしまいます。しかし、新米の遊女・おせんと村次との関係を知ってしまったお秋は、村次にこれまで散々食いものにされた挙句、遂には江戸から・・・・・

死んでやる、あの人の見ている前で、あたし死んでやるわ。意外のラストに感涙します。籠(かご)の中の蛍(ほたる)が印象的です。名作です
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みずぐるま
山本周五郎の 短編集です。旅芸人の一座で薙刀(なぎなた)の曲芸をしていた娘・若尾は、ひょんなことから岡崎藩の上士・弘田家の養女となり、義兄の和次郎を思慕するようになります。薙刀の指南役として、江戸邸へ召し出された若尾でしたが、和次郎の・・・・・

自分の素性が、和次郎の出世の妨げになると考えた若尾は、出奔してしまいます。「蛙(かえる)の子は蛙、あたしはやっぱり岩本一座の人間だわ」。和次郎の姉・深江の自殺の真相をうまく絡めながら、若尾と和次郎の心温まる“遠距離恋愛”を描いた感動作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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むかしも今も
山本周五郎の 中編集です。
愚直で不器用な性格である指物屋「紀六」の職人・直吉は、子供の頃に子守りをし、成長を見守ってきた「紀六」の娘・おまきのことを思い慕いますが、彼女は利巧者で腕のいい相弟子の清次と結婚してしまいます。清次の博奕(ばくち)好きが原因で、店はどん詰まりになってしまい、その後、・・・・・

主人公の愚直で一途な生き方に深い感動を覚えます。歴史小説のおもしろい作品です
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麦藁帽子
山本周五郎の 短編集です。温泉のある海村へやって来た斧田は、大きな古い麦藁帽子をかぶって、釣りをしている老人と出会います。自分の家の下男だった吾八が、猿の祟りで崖から墜ちて白痴になってしまったことや、自分の嫁になるはずだった娘が、嫁ぐ前に自分にくれた麦藁帽子のことなど、老人の思い出話を聞いた斧田でしたが、宿の女中から、老人の話は嘘で、彼がその・・・・・

「もう一生会わぬつもりか」、「老人には柿の実は毒だで」。現実を超越した、真実以上に真実な、美しい純愛話に、本当に感動します。
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柳橋物語
山本周五郎の中編集です。
両親に死なれ、祖父・源六と二人で暮らす十七歳の少女・おせんは、大工の杉田屋を辞めて大阪へ旅に出る幼な馴染(なじみ)の庄吉に、「待っているわ」と約束します。杉田屋の養子となった幼な馴染の幸太の求愛を拒絶した おせんは、手内職をして、卒中で倒れた源六の世話をします。そんな中、江戸で大火事が発生し、幸太の命がけの救助によって、おせんは命拾いしますが、幸太と源六は死亡してしまいます。
火事で孤児となった赤子(幸太郎)を拾い、育てながら、辛く苦しい日々を懸命に生きるおせんは、大阪から帰って・・・・・

「幸太さんわかってよ、あんたがどんなに苦しかったか、あたしには、今ようくわかってよ」
様々な人々とのかかわりを通して、ほんとうの愛を悟るまでの苦難の日々を描いた感動作品です。これ以上の名作は 他にないかもしれません
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山椿
山本周五郎の 短編集です。中老の娘・須藤きぬと結婚した作事奉行の梶井主馬でしたが、頑なに夫婦関係を拒まれてしまいます。きぬには愛を誓った榎本良三郎という男がいたのでした。望み通り、きぬを自害させた主馬は、無能との噂の良三郎と会います。
「あの人は榎本良三郎のゆくのを待っています、然し こんなみじめな榎本を待って・・・・・

、榎本、証拠をみせろ、あの人を信じていた人間になれ、それまでは石にかじりついても死ねない筈だ」。シリアスな展開から一転、ラストシーンに感動の渦です。歴史小説のおもしろい作品です
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夕靄の中
山本周五郎の 短編集です。博奕打(ばくちうち)の親分・七兵衛の娘・おつやと駆け落ちするも、失敗に終わり、桐生に逃れた半七。おつやを横取りした代貸の金次を殺すため、江戸へ戻って来た半七でしたが、岡っ引に尾行されてしまいます。
墓地に逃げ込んだ半七は、見ず知らずの若い娘・おいねの新墓を見つけ、墓参りのフリをしますが、そこへ・・・・・

。「私はおいねさんと夫婦約束をしていました」、「よかったねえ、おいね、おまえは仕合せだったんだねえ」。何もかも心得た思いやりによって救われる主人公の姿を描いた感動作品です。
歴史小説のおもしろい作品です
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ゆうれい貸屋
山本周五郎の 短編集です。底抜けの怠け者である桶屋の弥六。女房のお兼が実家に帰ってしまっても、仕事もせず、怠けたままです。そんなある夜、弥六の部屋に、成仏できずにいる幽霊のお染が現れる。お染と夫婦の盃を交わした弥六は、毎晩、お染が持ってくる酒と料理を飲んで食べて、楽しく過ごすが、店賃を・・・・・

お染の提案で、雇った幽霊たちを貸す商売を始めます。「うーらーみはーらーさーでえおーくーべーきいかー、あーらうらめしやな」。底抜けに楽しい喜劇作品です。中年男の幽霊の言葉が心に残ります。
歴史小説のおもしろい作品です
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