永井荷風(ながい・かふう/すみだ川 墨東綺譚(ぼくとうきたん)他 <あらすじ 要約>計7冊

永井荷風(ながい・かふう/すみだ川 墨東綺譚(ぼくとうきたん)他 <あらすじ 要約>計7冊

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永井荷風(ながい・かふう) 
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あじさい (四国の山なみ)
永井荷風の 短編集です。「おふくろさんのお墓かね」、「いえ。そうじゃ御在ません。先生だからおはなし申しますが、実は以前馴染の芸者で御在ます」。下谷の芸者・君香(お君)と馴染になった三味線ひきの宗吉は、彼女を素人にしてやろうと懸命になります。しかし、葭町の芸者屋に住み替ったお君が、そこの主人の持物になって姉さん気取りで・・・・・

「兄さん、みんなわたしが悪いんです。打たれても蹴られても、わたし決して兄さんの事を恨みはしないから、思い入れひどい目に会わして頂戴。」。女に入れ込みすぎた男の顛末をテンポ良く描いていて興味ぶかい作品です。歴史小説のおもしろい作品です
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或夜 
永井荷風の短編集です。姉夫婦の家に引き取られた十七の季子でしたが、姉の家にいるのが嫌で堪りません。別に居づらいというわけではなく、ここより外に身を置く処がないのが情けなくて嫌なのです。時々、省線の駅に来て、ぼんやり時を過ごす彼女は、ある青年に・・・・・

「京成の市川駅へはどっちへ行ったらいいんでしょう」、「京成電車にはそんな駅はありません」。季子の多感な心持ちが面白く、最期も笑える作品です。
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おもかげ 
永井荷風の 短編集です。「おのぶはもう死んでしまったのだし、おれが今だに一人でいるのも、つまる処その女のためなんだから、まア聞いてくれよ。今夜は喋りたいだけ喋らして貰おうよ」。タクシーの運転手・豊さんが語る身の上話です。結婚して三月で妻・おのぶと死に別れ、つらく悲しい日々を過ごす中、浅草の歌劇館で、・・・・・

それ以来、足繁く歌劇館に通うようになります。亡妻のことを引きずって生きる主人公の満たされない心持ちを描いたすぐれた作品です。
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すみだ川 
永井荷風の中編集です。「何故(なぜ)黙ってるのよ。どうしたの」、「明後日(あさって)帰って来てそれからまたあっちへ去(い)ってしまうんだろう。え。お糸ちゃんはもうそれなり向うの人になっちまうんだろう。もう僕とは会えないんだろう」。幼馴染の恋人・お糸が芸者になったため、これまでのように逢えなくなり、悲嘆にくれる長吉でした。
長吉を大学校に入れて立派な月給取りにしたい母・お豊(常磐津の師匠)と、若い頃に放蕩三昧した経験のある伯父・松風亭蘿月(俳諧師)の二人は、・・・・・

恋の苦痛から将来を絶望する少年の姿を、懐かしき隅田川の風景(荒廃の美)の中に描いていきます。恋愛小説 です
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つゆのあとさき 
永井荷風の長編集です。
着物の袂(たもと)を切られたり、鼈甲(べっこう)の櫛(くし)がなくなったり、押入れの中に猫の死骸が入っていたり、内腿に黒子(ほくろ)があることを新聞に暴露されたり、近頃、気味の悪い出来事が続いている銀座のバー「ドンフワン」の女給・君江です。
実は、嫌がらせの張本人は、人気小説家の清岡進でした。才色兼備な内縁の妻・鶴子がいるにもかかわらず、二十歳の君江を妾(めかけ)にしている清岡は、自分だけを愛していると思っていた君江が、いろいろな男達(好色の老人・松崎や、輸入商の矢田、舞踏家の木村など)と関係を持ち、淫恣(いんし)な生活を送っていることを知り、・・・・・

男女の機微、愛憎、駈引、そこはかとない人生の悲哀を描いた作品です。テンポと展開があって大変 興味ぶかい作品です。時代小説 です
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人妻 
永井荷風の短編集です。小岩の町外れの家の二階を借りた桑田でしたが、家の主人の浅野とその妻・年子の性生活が気になって仕方がなくなり、一日も早く引越したい気になります。豊満な年子にムラムラする桑田でしたが、浅野が留守の晩に事件が起きます。「秘密よ。絶対に秘密よ。あなただけしか・・・・・

きっとよ」。事件前後での桑田の心境の変化が興味ぶかく おもしろい作品です。
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墨東綺譚(ぼくとうきたん)   
永井荷風の長編集です。
お雪は倦みつかれたわたくしの心に、偶然過去の世のなつかしい幻影を彷彿たらしめたミューズであります。
家庭を捨て失踪した元教師を主人公とした小説「失踪」の実地観察を兼ねて、色街・玉の井へやって来た老作家・大江匡(ただす)。突然降り出した夕立の中、島田に結った古風ななりをした快活な娼婦・お雪と出会います。
夜の散歩の格好の休憩所を見つけた彼は、毎夜のように足繁く彼女の処へ通うようになりますが、女の心が・・・・・

二人が初めて出会う夕立の情景が鮮やかで、名場面です。 この墨東綺譚には、寂しさの中に動かない強さが在ります。いい作品です。
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