菊池寛(きくち・かん)/恩讐の彼方に 真珠夫人 父帰る<あらすじ 要約>計41冊

菊池寛(きくち・かん)/恩讐の彼方に 真珠夫人 父帰る<あらすじ 要約>計41冊

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菊池寛 (きくち・かん) 
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青木の出京 
菊池寛の 短編集です。永久の苦手ともいうべき危険性を帯びた男、青木雑誌社に勤めている広井雄吉は、銀座で旧友・青木と再会します。学生時代、哲学青年・青木の天才ぶりにすっかり畏敬の念を抱いた雄吉は、身代わりになって青木の危急を救ってやりますが、彼はとんでもない・・・・・

「貴様は青木に対します盲動的感激のために、一度半生を棒に振りかけたのを忘れたのか。強くあれ  どんなことがあっても妥協しますな」。またしても青木の術中にはまりそうな予感がします。悪友との再会をユーモラスに描いてたいへん興味ぶかい作品です。

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仇討禁止令 
菊池寛の 短編集です。勤王の志のため、佐幕派の家老・成田頼母をやむを得ず暗殺した高松藩の青年武士・天野新一郎でした。しかし、成田家とは別懇の間柄であり、頼母の娘・お八重は許嫁である新一郎は、心の痛みを感じます。新一郎が親の敵(かたき)だとは知らないお八重と万之助の姉弟を家に引き取り、面倒を見る新一郎でした。「子細とは・・・・・

「えっ 」、「父頼母を殺された無念は、どうしても諦めることができません」。相思相愛の女性と結婚できない主人公の苦悩を描いて感涙の悲恋話の作品です。

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仇討出世譚 
菊池寛の 短編集です。但馬出石の藩士・葉田与七郎が鳥を狙って放った矢が、同藩の大石半九郎に当たって死亡したことから、果し合いの悲劇になってしまいます。この一件の傍観者であった同藩の立石伊織だが、時のはずみで荷担人になってしまいます。葉田や大石らの遺族である少年たちは、立石を・・・・・

「立石殿に逢って、委細がわかれば、拙者等の敵は、立石殿でなくて、御身達かも知れんのじゃ」、「それは、こちらも覚悟している。望みとあらば、今でも立会うてやる」。犠牲的精神を描いて感動的な時代小説です。

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ある恋の話 
菊池寛の 短編集です。不幸な結婚生活から男嫌いになり、十八の年から後家を通して来た主人公の女性でした。そんな彼女が二十四五の時、図らずも、役者の染之助に恋をして、芝居小屋に通うようになりますが。役者自身には幻滅を感じますが、役者が演じる人物にうっとりするという夢現の恋です。「貴女様はその美しい・・・・・

“事情”を知らない染之助の煩悶が興味ぶかい作品です。
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ある抗議書 
菊池寛の 短編集です。多数の人間を殺害した凶悪犯・坂下鶴吉に姉夫婦を惨殺された私(姉の弟)でした。獄中でキリスト教の信仰を得た犯人は、死刑への恐怖もなく処刑されます。「犯罪なるものが、被害者の肉体のみならず、精神を・・・・・

、囚人が刑罰の為に肉体的にも精神的にも苦しむと云うことが云わば至当な事ではないかと思います」。刑罰の目的とは何なのかを問題提起した作品です。

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入れ札 
菊池寛の 短編集です。代官を殺し、関所を破り、逃走している侠客・国定忠治とその乾児(こぶん)たち。大勢では目立つため、忠治と行動を共にする三人を、十一人の中から入れ札で決めることにします。このままでは自分は選ばれないと思った九郎助は、何とかして・・・・・

「賭博は打っても、卑怯なことはしますな。男らしくねえことはしますな」。人間の心理を見事に描いていて秀逸な作品です。

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M侯爵と写真師 
菊池寛の 短編集です。国家の重職にあるM侯爵に気に入られた新聞カメラマン・杉浦辰三でした。向こう見ずの剽軽者である彼は、平民的と評判のM侯爵にスッポンをご馳走に・・・・・

社交辞令を平気で言う者が悪いのか、社交辞令を真に受ける者が悪いのか。社交辞令の良し悪しを描いて興味ぶかい作品です。

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恩讐の彼方に 
菊池寛の 短編集です。主人である旗本・三郎兵衛を殺害し、逃亡した下男・市太郎だが、良心の呵責に囚われ出家します。一方、大人に成長した三郎兵衛の倅・実之助は、敵討の旅へ出発しますが。「主(しゅ)を打って立ち退いた非道の汝を打つ為に、十年に近い年月を艱難の裡(うち)に過したわ。ここで会うからは、もはや逃れぬ・・・・・

二十余年もの間、一途にトンネルを掘り続ける姿に驚愕します  恩讐も吹き飛ばす偉大なる努力  感動の展開となります

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女心軽佻 
菊池寛の 短編集です。「一生涯決して再婚なんか致しませんわ」。医者で道術の達人である夫・黒川源太主にそう誓った妻・深谷(みたに)でしたが、源太主が病死してしまうとすぐ、源太主の弟子・道龍と再婚したいと望み、・・・・・

「私があの人に操を守る義理なんか少しもございませんの。貴君(あなた)さえおよろしければ、亡き良人(おっと)の貯えも、皆貴君に差し上げます」。どんでん返しの展開が興味ぶかい作品です。

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恩を返す話 
菊池寛の 短編集です。島原の乱で、兵法の同門である佐原惣八郎に命を助けられてしまったことが悔しくてならない熊本藩士・神山甚兵衛でした。早く恩を返して、不快を取り除きたいと考える甚兵衛だが、その機会が訪れないまま、徒に月日が経ってしまいます。ある科で罪人となった惣八郎の討手に選ばれた甚兵衛は、・・・・・

受けた恩が心の負担となり悩み苦しむ人間心理を描いて興味ぶかい作品です。
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敵討母子連れ 
菊池寛の 短編集です。武士の体面にこだわるあまり、同輩の高木主馬に果し合いを挑み、斬殺された水戸藩士・浜村左兵衛でした。左兵衛の妻・貞は、元服した息子・竹之助を連れて敵討の旅へ出ます。心の優しい竹之助と、親切で慈愛に充ちた老武士との心の交流。「一目会った時より、そなたが子か孫・・・・・

「拙者とても、同様。父上か、伯父上かのように」。敵討を超越した感動作の一品です。

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形 
菊池寛の 短編集です。「槍(やり)中村」と呼ばれて、敵から恐れられている侍大将・中村新兵衛でした。トレードマークである猩々緋(しょうじょうひ)の陣羽織と唐冠の兜を、若い士(さむらい)に貸して、出陣する新兵衛でした。「ああ猩々・・・・・

「形」も大切だという教訓ものの作品です。

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狐を斬る 
菊池寛の 短編集です。二十以上も齢の違う小間使い・おなみを妻として扱うようになった浪人・川路左司馬でした。おなみと越後屋の手代・清吉との善からぬ関係を知った彼。自分の面目を保ち、おなみを救ってやる方法とは  「何  清吉  たとい、出入りの町人と申せ、深夜に・・・・・

えい  云いわけ無用じゃ。くどい  えっ 」。奇抜で平和的な解決方法が、立派で面白く素晴らしいです。名作です

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吉良上野の立場 
菊池寛の 短編集です。公儀から勅使饗応役を命じられた浅野内匠頭は、接待費を切り詰め、指南役の吉良上野介への付届も倹約します。そのために吉良と険悪な関係となり、遂には・・・・・

「わしの言い分やわしの立場は、敵討という大鳴物入りの道徳のために、ふみにじられてしまうのだ」。忠臣蔵を吉良の立場から描いていて興味ぶかい作品です。

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勲章を貰う話 
菊池寛の 短編集です。ワルシャワの小劇場の歌手・リザベッタに惚れたロシア軍の士官候補生・イワノウィッチでしたが、彼女を巡って上官・ダシコフ大尉と対立する羽目に陥ります。彼女と別れれば十字勲章をやるというダシコフを憎悪する彼は、ドイツ軍が迫り来る中、ダシコフを・・・・・

。女を完全に自分のものにしようとするエゴ、戦争がもたらす「人を殺す」という感覚の麻痺。凄まじい戦場の描写が秀逸な作品です。
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好色成道 
菊池寛の短編集です。勉強しなければという良心はあるものの、ついウカウカと怠慢な生活を送ってきた比叡山の若い学僧でした。嵯峨に参詣した帰りに、美女の家に泊めてもらった僧は、出家の身であることも忘れて、無性に女と契りたくなって・・・・・

「ぜひ、勉強して法華経を空で読めるようになって下さい。そうなれば、ぜひもう一度訪ねて来て下さい、いろいろお話もしたいと思いますから」。

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極楽 
菊池寛の短編集です。安らかな往生を遂げた老女・おかん。望みどおり極楽浄土へ辿り着いた彼女は、死別した夫・宗兵衛と十年ぶりに再会しますが、なぜか彼は余り嬉しそうな顔をしません。「何時まで、こうして坐って居るのじゃろう」、「くどい  何時までも、何時まで・・・・・

永遠に続く平穏無事な生活。退屈しのぎに「地獄」の話をする皮肉でした。極楽の実態を描いて興味ぶかい喜劇作品です。

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島原心中 
菊池寛の 短編集です。京都の色街・島原で起きた心中事件です。死に損なった若い男を尋問する検事は、短刀で喉を突いて死亡した娼妓の自殺幇助の事実を自白させ、職務的な満足を覚えます。あの若者のような場合に、あの若者のような・・・・・

、自然な人情ではないか。それが、人間として美しいことではないか。一人の娼妓の死を通して、法律や尊厳について考える作品です。

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俊寛 
菊池寛の 短編集です。鹿ヶ谷事件で鬼界ヶ島に流刑となった三人でした。康頼、成経は赦免されて帰京するが、僧・俊寛だけは許されず、孤島での生活を強いられます。絶望のあまり自殺も考える俊寛だが、一人になったことで、逆に人生に対する執着がなくなり、生まれ変わったような・・・・・

。絶海の孤島での自然生活、土人の少女との家庭生活。逆境の中の幸福を描いて印象深い歴史小説作品です。

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上意打 
菊池寛の 短編集です。江戸町人を殺した若武士・原兵馬を上意打にすると決めた松代藩主・真田伊豆守でした。伊豆守の将棋の相手をしている侍医・山田道順は、その事をこっそり原兵馬に伝えるべきか悩みます。「将棋の上では、どんな失礼をしても、お怒りになりません。その代り、将棋以外の事は、何も申し・・・・・

将棋以外では、相手はお殿さまで、わしはわずか五十石の医師だからなア」。

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勝負事 
菊池寛の短編集です。「勝負事は、身を滅ぼす基(もと)じゃから、真似でもしてはならんぞ」。小学校時代、家が貧乏のために、旅費が払えず、修学旅行に行けなかった私は、天性の賭博(ばくち)好きであった祖父のせいで、金持ちだった一家が一文なしに・・・・・

「今度も、わしが勝ちじゃぞ、ははははは」。改心したはずの祖父が人生最後にした勝負事とは何でしょう   ほのぼのとしたいい話の作品です。
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心形問答 
菊池寛の短編集です。人に頼まれて書いた写経が、よこしまな態度で書いたとして皆から訴えられてしまった歌人のてん末や、よこしまな企てによって仏師に薬師如来を造らせた悪党の男のてん末を・・・・・

どんな態度で写そうとも、どんな態度で造らせようとも、お経は、お経そのものが尊いのであり、仏像は、仏像そのものが尊いのであるということを説いたものです、大変、ありがたいお話です。いい作品です

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真珠夫人 
菊池寛の長編集です。
会社員・渥美信一郎が乗車した乗合自動車が事故を起こし、同乗していた大学生・青木淳が死亡してしまいます。青木の手記を読んだ信一郎は、彼がある女性に純愛を弄(もてあそ)ばれ、心を傷つけられ、失意の中、死場所を求めて彷徨っていたことを知ります。彼の死は、形は奇禍だが、心持ちは自殺だったのでした。

成金の実業家・荘田勝平が主催する園遊会に顔を出した唐沢男爵の娘・瑠璃子とその恋人・直也(杉野子爵の息子)だが、勝平の金力を罵倒したため、勝平の恨みを買ってしまいます。金力に物を言わせて、瑠璃子の父親・正徳を迫害していく勝平。唐沢家を守るため、・・・・・

群がる男性たちを翻弄し去る、真珠の如く美しき妖婦・瑠璃子。その本当の心、その本当の姿とは 。
ミステリー、復讐ばなし、三角関係などの要素を盛り込みながら展開される恋愛悲劇作品です。

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ゼラール中尉 
菊池寛の短編集です。ベルギー・リエージュにあるフレロン要塞の砲兵士官であるゼラール中尉です。自分の意志を絶対に曲げない我執(がしゅう)な性格のため、深い交友が得られず、友人が一人もできません。せっかく新任のガスコアン大尉と仲良くなるも、葡萄酒の話で揉め、独軍がベルギーに侵入するかどうかで激しい議論となり、二人の仲は・・・・・

「時が証明するのを待とう」、「むろん  お互いにさ」。最後まで“意地”につきまとわれたゼラール中尉の姿が、滑稽すぎて、哀れすぎて、立派すぎて、凄すぎます

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船医の立場 
菊池寛の 短編集です。「夷人(いじん)の利器によって夷人を追い払うのだ」。アメリカへの密航を企てた青年武士・吉田寅二郎(松陰)と金子重輔は、下田に入港した黒船に命からがら乗り込みます。副艦長・ゲビスは、二人の志望を容れるべきだと熱弁し、ペリー提督を感動させます。「私は船医の立場から、ただ一言・・・・・

。正義人道  対 実際問題    船医・ワトソンの苦悩を、感情論の良し悪しを描きだす作品です。

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忠直卿行状記 
菊池寛の 短編集です。大阪夏の陣で功名を挙げ、自分が誰よりも優秀な人間であると確信するに至った六十七万石の福井藩主・松平忠直(ただなお)は、槍術に秀れた家臣たちを集めた仕合で勝利し、有頂天になります。「以前ほど、勝をお譲り致すのに、骨が折れなくなったわ」。その勝利が実力ではなく忠義による偽り・・・・・

忠直卿は。「ならぬ  ならぬと申せば、しかと相ならぬぞ」。人間としての人情を味わったことのない暴君の孤独でした。封建制度の不幸を描いた歴史時代小説の名作品です。

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父帰る 
菊池寛の短編集です。戯曲。不義理な借金をこさえ情婦を連れて出奔(しゅっぽん)した父・黒田宗太郎が、二十年ぶりに突然家に帰って来ました。家族が温かく迎え入れる中、長男・賢一郎だけは強硬に反対します。すっかり落ちぶれ年老いた宗太郎は、仕方なく家を出て行きます。「俺たちに父親(てておや)が・・・・・

俺に父親があるとしたら、それは俺の敵(かたき)じゃ」。父親に積年の恨みをぶつける賢一郎でしたが、心の中では既に父親を許していたことが判る最後のシーンが感動です。いい作品です

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貞操問答 
菊池寛の長編集です。没落した家族を支えるため、金持ちの前川家で家庭教師をする新子は、いつしか主人の準之助と純愛関係になります。準之助の出資で銀座のバーのマダムになった新子だが、高慢な妻・綾子に感付かれてしまいます。「女学生のような恋愛」の行方は  

貞操問答は、「真珠夫人」の成功で一躍流行作家となった菊池寛の通俗小説です。
贅沢がやめられず、生活をかえりみない家族を支えるため、軽井沢に別荘を持つ前川家の家庭教師になった主人公の新子でした。しかし、高慢な夫人・綾子によって解雇されてしまいます。

そのきっかけとなった「事件」が・・・・・

「仕度」という字は、「支度」の方が正しいと新子が指摘したがために、綾子の怒りを買ってしまったのでした。女としての悪徳である、嫉妬心、高慢、わがまま、邪推をさらけ出す綾子夫人でした。

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藤十郎の恋 
菊池寛の 短編集です。江戸歌舞伎の中村七三郎の人気と、自身の芸の行き詰まりに、烈しい焦燥と不安を覚えた上方の人気役者・坂田藤十郎でした。新しい役に挑戦することにした藤十郎は、近松門左衛門に脚本を書いてもらいますが、役作りに苦悩します。芸のために、人妻・お梶(茶屋の女房)を・・・・・

「藤様、今仰(おっしゃ)った事は、皆本心かいな」。“偽りの恋”の功罪を描いた時代小説の名作です。

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猫騒動異聞 
菊池寛の 短編集です。怪猫の祟りの噂で恐々としている佐賀藩の人々。飼っていた小鳥を、野良猫に殺された少年武士・小野半之丞は、弓で猫を射ち殺しますが、それ以来、猫の声の幻聴に悩まされ、憔悴しきってしまいます。叔父・伊東惣太に言われ、切腹を・・・・・

「武士は死を覚悟しておれ。死を覚悟していれば、あらゆる迷いはないのじゃ」。武士のこころ構えを描いて素晴らしい作品です。

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奉行と人相学 
菊池寛の 短編集です。旗本・山中左膳から人相学を教わった江戸町奉行・大岡越前守。「わたくしめは、変な性分で、裕福そうなお人を見ると、つい盗んでやりたくなります。貧乏なお人を見ると、ついくれてやりたくなります。もって生れた性分で、理屈も・・・・・

陰徳の相にめでて、盗賊・長吉の罪を赦してやる越前でした。長吉の義賊すぎる行動に涙、涙。 大岡裁きの真髄が味わえる感動の作品です。

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弁財天の使 
菊池寛の短編集です。庭の池にお社を作るほど弁財天に対する信仰があつい豪商・住吉屋藤兵衛でした。不忍池の弁財天にもよくお参りしている藤兵衛は、不忍池で池浚(さら)いが行われると知り、心を痛めます。そこへ弁財天の使者だという美女が・・・・・

「他聞をはばかることでござりますゆえ、もう少し近うお寄り下さいませ」。

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報恩紙帳売 
菊池寛の短編集です。若党・新助と奥女中・琴の不義密通を知った彦根藩士・向坂次郎左衛門と妻・お滝は、二人を手打ちにせず、暇を出しますが、そのために食禄を召し上げられてしまいます。江戸で所帯を持った新助と琴は、次郎左衛門夫婦と・・・・・

「向坂様の奥方なら、どうぞお名乗り下さいませ。貴女様御夫婦から大恩を受けました若党の新助でございます」。
北町奉行・能勢肥後守の裁きが実に素晴らしい。名作です

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謀略 
菊池寛の短編集です。「困ったのう」。龍口山の城主・最所治部が毛利方に寝返ったと知り、頭を悩ませる備前の浮田直家でした。「これは奇怪な、賭け碁に待てはござりませぬ」、「いや、待てと申すに 」、「なりませぬ」、「待て」、「御卑怯な」、「何を」。囲碁の勝負ですっかり直家を怒らせてしまった腹心・岡郷介は、やむなく直家の・・・・・

戦国武将・宇喜多直家の家臣・岡剛介の武勇伝を描いた時代小説です。

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身投げ救助業 
菊池寛の短編集です。自殺者の絶えない琵琶湖疎水のほとりに住む老婆がいました。「私でも、これで人さんの命をよっぼど助けているさかえ、極楽へ行かれますわ」。長い竿を差し出して、数多くの投身者を助けてきた老婆でしたが、助けてやった人たちがまったくお礼を言って来ないことに・・・・・

「折角命を助けてやったのに、薄情な人だなあ」。自分が当事者になった時、気づかされることとは  ブラック・ユーモア満載です。

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無名作家の日記 
菊池寛の 短編集です。作家としての天分に恵まれた友人・山野(芥川龍之介)たちの不快な圧迫から逃れるため、京都へやって来た文科大学生・富井(菊池寛)でした。自分を除け者にして同人雑誌 を出版する山野に、嫉妬・反感・孤独・焦燥を感じます。一躍して文壇に認められ、すっかり流行作家になった山野の好意で、同人雑誌に作品を発表するチャンスを・・・・・

「俺は山野より天分が劣っていることを自覚しながら、なお山野の出世を呪っているのだ」。天才・山野に対する負け犬の遠吠えを描いておもしろい秀逸な作品です

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無憂華夫人 
菊池寛の長編集です。親族同士でありながら、維新の時の旧怨を引きずり、懇親を結べないでいる康為侯爵と康正伯爵でした 康為の妹・絢子と康正の弟・康貞は、頑固な旧臣達の反対で縁談は破談になってしまいます。「僕は、貴女以外の女性とは、絶対結婚しません。つまり、僕は生涯独身を続けようと思います」、「まあ  私も、そういたするわ」。しかし絢子は義姉の弟・芳徳との結婚を余儀なくされ。華族ならではの恋愛悲劇を描いた通俗小説です。
渡欧した康貞のことを想い続ける絢子は、芳徳との結婚生活が・・・・・

その辺の件(くだり)が楽しいのです。無憂華夫人は、典型的な悲恋小説。菊池寛版「ロミオとジュリエット」です。

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蘭学事始 
菊池寛の 短編集です。蘭学者・前野良沢に軽い反感を抱いている蘭方医・杉田玄白は、入手した蘭書「ターヘルアナトミア」を良沢の前で得意げに披露しようと企てますが。「これは紛れもなく同本じゃ。不思議な奇遇で・・・・・
良沢たちと「ターヘルアナトミア」を翻訳して「解体新書」を出版するに至る玄白の心情(良沢との考え方の相違)を描いて興味深いです。先駆者ゆえの地道な翻訳作業に頭が下がる思いがします。

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乱世 
菊池寛の 短編集です。官軍に帰順(投降)する道を選び、愁眉を開いた桑名藩だが、鳥羽伏見の戦で官軍の錦旗に向かって発砲した十三人の敗兵たちは、官軍の命令によって四日市のお寺に幽閉されてしまいます。獄門台が作られる光景を目の当たりにした彼らは、死罪となる運命を受け入れていきますが、青年藩士・新谷格之介だけは、愛妻・おもとが恋しいこともあって、どうしても・・・・・
どんでん返しと皮肉なラストが面白くも悲しい幕末もの時代小説です。

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六宮姫君 
菊池寛の短編集です。五年などは、待たさない。きっと何かの機会を得て、二、三年で都へ帰って来ます。ただでさえ貧乏な上に、相次いで両親を亡くした六の宮・・・・・
彼女を見初めた男は、毎夜のように姫の家に通いますが、父親の任地である奥州へ行かなければならなくなってしまいます。

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若杉裁判長 
菊池寛の短編集です。罪人に対して寛大な判決を下すことで有名な裁判長・若杉浩三でした。恐喝未遂事件を起こした少年の公判で若杉裁判長は、県立中学の優等生で級長もしている少年に大いに同情します。実刑を課さずに、執行猶予を言い・・・・・

罪人の側からのみ、罪を考えるのではなく、犯罪被害者の感情を考慮した裁判の必要性を説いた作品です。共感を覚える いい作品です。

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