泉鏡花 (いずみ・きょうか)/高野聖 外科室 夜行巡査  計10冊<あらすじ 要約>

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泉鏡花 (いずみ・きょうか) 
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海城発電 
泉鏡花の 短編集です。敵(清国)から感謝状が送られるほど職務に忠実すぎる赤十字の看護員・神崎と、そんな神崎を国賊だと糾弾します愛国の軍夫・海野です。 「貴様は国体のいかむを解さない非義、劣等、怯奴(きょうど)である、国賊である、破廉恥、無気力の人外(にんがい)である」、「愛国心がどうであるの、敵愾心(てきがいしん)がどうであるのと、左様なことには・・・・・

二人の偏重の犠牲となる女性・李花。黒衣の人物の正体が分かる最後がとっても風刺的作品です。 
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義血侠血 
泉鏡花の中編集です。
乗り合い馬車の馭者(ぎょしゃ)と客として出会った青年・村越欣也と見世物小屋の水芸の女芸人・滝の白糸こと水島友です。

思いがけず金沢で欣也と再会した白糸は、東京で法律を学びたいという欣也のために、学費の援助を申し出て、二人は親類の契りを結ぶのでした。欣也への仕送りのため、金主(きんしゅ)から給金を前借りした彼女だが、その大事な大金を強盗に奪われてしまいます。欣也へ送る金の・・・・・

ドラマチックで興味ぶかい出会いの場面や、純潔清浄な白糸と欣也の生き生きとした会話文、そして、強盗殺人場面の臨場感の物凄さです  悲しく切ない悲恋物語です。紛れもない傑作作品です。
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外科室 
泉鏡花の 短編集です。「わしにも、聞かされぬことなんか。え、奥」、「はい。だれにも聞かすことはなりません」。うわ言を聞かれるのを恐れて、頑(かたく)なに麻酔を拒む貴船(きふね)伯爵夫人。麻酔をしないで手術をするよう決然と言い放します。 死をもって守ろう・・・・・

医学士・高峰が執刀する手術の場面は実に官能的です。「でも、あなたは、あなたは、私(わたくし)を知りますまい 」、「忘れません」。九年前、小石川の植物園でたまたますれ違っただけの男女。究極の相思相愛を描いた最高の恋愛小説です。
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高野聖(こうやひじり) 
泉鏡花の中編集です。
高野山の旅僧・宗朝(しゅうちょう)が語る修行時代の神秘体験です。飛騨の山中。間違って危険な旧道に入って行った薬売りの男の身を案じた僧がいました。男の後を追って、蛇や蛭(ひる)が出没します道を命からがら進み行った僧は、美しい婦人(おんな)が住む孤家(ひとつや)に辿り着きます。

「すっぱり裸体(はだか)になってお洗いなさいまし、私が流して上げましょう」、「いえ」、「いえじゃあござんせぬ、それ、それ、お法衣(ころも)の袖が・・・・・

僧の運命やいかに   官能ホラー作品です。ベストセラーで有名です おもしろくて、いい作品です
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政談十二社 
泉鏡花の 短編集です。新宿の町端(まちはずれ)・十二社(じゅうにそう)にある茶屋に立ち寄った判事・小山由之助は、茶屋の婆さん(お磯)から、役人・沢井の邸の小間使い・お米(よね)の不幸な身の上を聞かされます。沢井邸で発生した大金紛失事件です。けったいな予言者・仁右衛門爺の・・・・・

「無くなった金子(かね)は今日出たが、汝(うぬ)が罪は消えぬのじゃ」、「厭よ、厭よ、厭よう」。どうにもタチの悪い仁右衛門爺  対 端っから下心ある 小山判事    ハッピーエンドでむかえる小説です。
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鷭狩(ばんがり) 
泉鏡花の 短編集です。「思いも寄らない  それに、余り美しい綺麗な人なんだから」。片山津(加賀)の温泉宿。夜中に厠(かわや)へ立った宿泊客の雪次郎(画家)は、洗面所で別嬪の中年増(宿の女中・お澄)と出あいます。彼女が、鷭狩りに出掛ける客(女郎屋の主人)のために、夜中にもかかわらず、湯に入り、髪を結って・・・・・

「お澄さん、私は折入って姐(ねえ)さんにお願いが一つある」。薄幸の女が貫いた一生に一度の覚悟と、凛とした、きっぱりとした態度に驚嘆します 
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みさごの鮨 
泉鏡花の中編集です。
加賀・山代温泉の旅館「近江屋」に宿泊した年配の大学教授・榊(さかき)三吉は、気立ての優しい芸妓(げいしゃ)・小春と出会います。いんきんたむしで、癇癪(かんしゃく)持ちで、嫉妬(やきもち)やきである雑貨店の旦那(治兵衛坊主)の、心中(しんじゅう)の道連れにされそうになった小春の命を助ける教授でした。「心中の相談をしている時に、おやじが蜻蛉(とんぼ)釣る形の・・・・・

大まかでのんびりした「近江屋」の様子や、「北国(ほっこく)一」が口癖の女中・お光との交流が楽しいのです。それだけに、結末の悲劇が涙を誘います。ちなみに、紙屋治兵衛は浄瑠璃「心中天網島」の主人公の名前です。
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夜行巡査 
泉鏡花の 短編集です。まったく融通がきかず、冷酷なまでに職務に忠実すぎる巡査・八田義延です。そんな八田と姪・お香の結婚を反対する伯父でした。お香のことも八田のことも気に入っているにもかかわらず、伯父はなぜ絶対に反対するのでしょう  その身勝手すぎる理由とは  「どうだ、解ったか。あらゆることをして苛めてやる」、「あれ、伯父さん、もう私は、もう、ど、どうぞ堪忍してくださいまし。・・・・・

どっちもどっちな二人(伯父と八田)の偏屈ぶりが 凄いのです。コメディー小説です。ベストセラーで有名です おもしろくて、いい作品です
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夜叉ヶ池 
泉鏡花の中編集です。
戯曲。越前・三国岳の麓(ふもと)の里を訪れた文学士・山沢学円は、行方知れずになっていた親友・萩原晃と再会を果たします。村の娘・お百合と夫婦になった晃は、村の言い伝えである夜叉ヶ池の盟誓(ちかい)を守るため、毎日三度、鐘堂(つりがねどう)で鐘を鳴らす役目を果たしていました。一度でも怠ると、竜神が水害を起こして、村が滅びてしまうのだといいます。旱魃(かんばつ)で苦しむ・・・・・

「ならん、生命(いのち)に掛けても女房は売らん、竜神が何だ、八千人がどうしたと  神にも仏にも恋は売らん」。夜叉ヶ池の主・白雪姫の不幸なる身の上と、恋人に会いに行けない苛立ちがあります。夜叉ヶ池の伝説を題材にした作品です。圧倒たる最終場面におどろきます  サスペンス小説 です
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湯女の魂 
泉鏡花の中編集です。
友人・篠田の情婦(いろ)である湯女のお雪に会いに、北陸の温泉宿を訪ねた学生・小宮山でしたが、お雪は病気で臥せっていました。生霊に取り憑かれ、毎晩うなされるというお雪を、一晩看病することになった小宮山でしたが。「さあどうだ、お前、男を思い切るか、それを思い切りさえすれば復(なお)る病気じゃないか、どうだ・・・・・。 
怪しい女が棲む孤家(ひとりや)での恐怖の光景です  強ければ強いほど悲しく切ない女の念(おもい)です。軽快な語り口がすこぶる読みやすい怪談悲恋話です。
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