田舎教師/田山花袋
日露戦争の戦況に一喜一憂している明治の中期ごろ、中学を卒業した清三は、親友の父のはからいで、貧しい父母を養うために高等小学の教師となりました。
師範学校に進もうとする友人たちの中で、自分だけ田舎教師として人生を終えるのかとあせった清三でしたが、彼には、まだ、その境遇からいつかは抜け出ようとする意欲もあり、清三は中学時代の仲間と同人誌「行田文学」を発刊しました。
しかし同人誌は4号で廃刊、仲間たちからは 文学の情熱が失われ、芝居見物や女遊びにはしゃぐようにになっていく姿を清三は寂しい気持ちで見つめていました。
冬休み、実家に帰った時、親友の郁治を訪ねました。
ひそかに慕っていた美穂子と郁治が親しく文通している事を知り、恋愛も学問も消極的になる自分を辛く感じるのでした。
しかし「自己を尽くし潔く運命に従おう」という心境になりました。
それからの清三は、絵を描いたりオルガンを弾いている時間が多くなり、行田の友人とも会う事も少なくなっていました。
教師になって3年目には、上野の音楽学校を受験しましたが 失敗に終わりました。
羽生に帰った清三は、虚しく寂しい生活から立ち直ろうとしました。
過去を忘れ教え子たちを愛し、健康を取り戻し、野心を捨て両親の面倒を見、昔の友達も復活させようとします。
しかし、清三は不治の病にとりつかれ、次第に衰弱して寝たきりとなり、この田舎も日露戦争の戦勝で湧きかえる中、一人さみしくこの世を去って行くのでした。
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