三四郎/夏目漱石
熊本の高校を卒業し、大学に入学するために 母を故郷に残して 上京した小川 三四郎でした。
だが東京は、見るもの聞くものすべてが驚きで、自分の常識とは全く違った世界でした。
彼は、同郷の先輩であり、理科大学で研究生活を送る学者の野々宮宗八、友人となる佐々木与次郎、英語教師で独身の広田先生、そして「無意識な偽善者」里見美禰子、野々宮宗八の妹で 女学生の野々宮よし子ら と出会います。
三四郎は自由気ままな都会の女性、美禰子に心をひかれていきます。
三四郎に対してどっちつかずの素振りを見せる美禰子でした。
そして、悩む三四郎。
「ヘリオトロープ」と女が静かに言います。三四郎は思わず 顔をあとへ引きました。
ヘリオトロープの罎(びん)。
四丁目の夕暮。迷羊(ストレイ・シープ)。迷羊(ストレイ・シープ)。空には高い日が明らかにかかります。
「結婚なさるそうですね」
美禰子は白いハンケチを袂(たもと)へ落としました。
「御存じなの」と言いながら、二重瞼(ふたえまぶた)を細目にして、男の顔を見ました。
美禰子は「迷える羊(ストレイ・シープ)」という言葉を三四郎に幾度となく投げかけ、ついには兄の友人と結婚してしまうのでした。
「我はわが愆(とが)を知る。わが罪は常にわが前にあり」
聞き取れないくらいな声でした。それを三四郎は明らかに聞き取りました。
三四郎と美禰子は そのようにして別れました。下宿へ帰ったら母からの電報が来ていました。
あけて見ると、いつ立つ とありました。
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