秘密の花園/フランシス・ホジソン・バーネット <あらすじ 要約>
とおい、むかし、おそろしい病気で、お父さんとお母さんをなくした メリーは、おじさんの屋敷でくらすことになりました。
おじさんの屋敷は、古いけれどりっぱな建物で、美しい庭もありました。
でも、なんだかここには、秘密がいっぱいあります。
と、いうのも、おじさんは たくさんある部屋にカギをかけていて、
「メリーの使う二つの部屋のほか以外は、決して開けないようにしないこと」
と、こわい顔で言うのです。
そして、畑や果実の林がある、広い花園の扉も、けっして開けないようにとも言うのです。
メリーは召し使いのマーサに、その理由を何度もたずねました。でも、マーサはいつも、
「余計なことは考えないことですよ。お嬢さま」と、言うだけでした。
だけど、そう言われれば、ますます知りたくなります。
そんなある日、メリーは庭を散歩するうちに、花園のカギを ぐうぜん土の中から見つけだしました。
それはメリーだけの秘密でしたが、友だちになったマーサの弟、ジッコンだけに 話しました。
ジッコンは元気な男の子で、子ウマを いつもつれています。
ジッコンはふしぎなことに、どんな動物からも、すぐに好かれてしまいます。
メリーはジッコンに、
「秘密の花園のカギを開けて、いっしょに行きましょうよ」
と、さそいました。
今まで十年の間、誰もはいらなかった花園は、草がビッシリとはえていましたが、あちこちにすてきなバラの花がさいています。
ジッコンは、思わずさけびました。
「すごいや! こんなに美しい花園は、見たことがないよ!」
そのときからメリーとジッコンは、ないしょで、秘密の花園の手入れを始めたのです。
しばらくしてメリーは、この秘密の花園は、十年前になくなったおばさんが大切にしていたところだと知りました。
そして、おじさんとおばさんが、この花園でよく散歩をして、楽しくすごしていたことも知ったのです。
けれど十年前のある日、おばさんは花園でお気にいりの大きな木の枝に腰かけていたときに、枝がおれて大けがをしたのです。
そのけがが もとでなくなってから、おじさんは花園をにくんで、扉をしめて 入れなくしてしまったのでした。
そのことを知ったメリーは、
「私はこの花園を、きっと生き返らせてあげる!」
と、心にちかったのです。
そして、もう一つの秘密も知りました。
それは、おじさんの息子のコリンが、図書室のカーテンのむこうの部屋にいることです。
コリンは長い間、背中と足のまがってしまう病気のために、ベッドで寝たきりでした。
ある夜、メリーは泣き声を聞いて、そっとカーテンのむこうの扉を開けたのです。
そのときが、メリーとコリンとの初めての出会いでした。
コリンは、元気そうなメリーに言いました。
「お前みたいに健康なやつには、ぼくの気持ちなんかわからないよ。ぼくはどうせ、もうすぐ死ぬんだ。とうさんも、屋敷のみんなも、そう ねがっているんだ」
メリーはコリンに、かなしそうに言いました。
「おねがい。そんなふうに思わないで。私が友だちになるわ」
その日から、メリーはコリンに話を聞かせたり、遊び相手になったり、ジッコンのことも秘密の花園のことも話しました。
何日かたって、ジッコンも小リスや小鳥をポケットにいれ、生まれたばかりの子ヒツジを連れて、コリンの部屋をたずねました。
コリンはとても喜び、ジッコンとも仲良くなりました。
今までは、誰の言うことも聞かず、
「ぼくは死ぬんだ、ほっておいてくれ」
と、言うばかりだったコリンも、だんだんメリーとジッコンに心を開くようになりました。
そして、メリーにたのんだのです。
「ぼくを外に連れていってよ。花園を見てみたいよ。ぼくのお母さんが愛した花園だもの。ぼくはどうしても見たいんだ」
「そうよ、あなたのお母さんが愛した花園を、見に行きましょう!」
メリーはコリンを車いすに乗せると、外へ連れ出しました。
青白いコリンの頬(ほほ)は、まぶしい日の光をあびて、サクラのように赤くなりました。
「ぼく、なんだか元気になっていくみたいだ。ぼくの体の奥から、『生きたい、ずっと生きていたい!』って、声がするみたいなんだ」
メリーとジッコンは車いすを押して、二人で手入れをした花園へ行きました。
木々の緑の葉はキラキラとかがやき、赤やピンクのバラの花は、妖精のドレスのように美しくさいていました。
コリンは、メリーとジッコンに言いました。
「ぼく、きっと元気になるよ。そしてこの美しい花園を、自分の足で散歩するんだ」
それからコリンは、ほんとうによく食べるようになりました。
肉もついてきて、とても健康そうに見えます。
召し使いもお医者さんも、コリンが元気になっていくのを見てビックリです。
あとは、コリンが勇気を出して、車イスをおりて、自分の足で歩くだけです。
メリーもジッコンも、コリンを激励しました。
ですが、コリンはなかなか、最初の一歩をふみ出す勇気が出ません。
何日かすぎて、庭番のべンおじいさんが、秘密の花園にはいっているコリンを見ておどろきました。
「おまえさまは、体が まがっているんじゃないのかい?」
コリンはそのとき、体の奥から力がわいてきました。
「ぼくは、ぼくは、元気になったんだ!」
そして車イスからおりると、しっかりと緑の草の上に立ったのです。
メリーもジッコンも庭番のべンじいさんも、大喜びです。
でも、秘密の花園にはいって遊んでいることは、この四人のほかには、やっぱり秘密でした。
そうして、一年がたちました。
コリンは秘密の花園で、少しずつ歩く練習をしたり、かるく体操してすごしました。
メリーとジッコンは優しく見守り、何ヶ月かたつと、コリンにも花園の手入れを手伝わせるようになりました。
やがて、新しい春がやって来ました。
コリンは、すっかり元気な男の子になりました。
メリーと一緒に走り、ジッコンのように小リスや小鳥や子ウマと、仲良く遊べるようになりました。
そんなある日のことです。
コリンのお父さんは、庭の花園からわらい声がするのを聞きました。
開けてはいけないと言ってある扉が、ほんの少し開いています。
「誰だ!」
コリンのお父さんは、思わずどなりました。
すると扉を開けて、かがやくような笑顔で男の子が走って来ます。
「お父さん、ぼくだよ、コリンだよ!」
コリンのお父さんは、奥さんをなくしてからずっと、息子のコリンのめんどうをみていませんでした。
かなしみの中に、とじこもって生きていたのです。
同じ屋敷に住みながら、コリンをだきしめたことなど、ここ十年なかったのです。
「コ、コリン。 ほんとうにお前はコリンかい!」
「そうだよ、メリーとジッコンと動物たち、それにお母さんの花園が、ぼくを元気にさせてくれたんだ!」
メリーとジッコンは、顔を見合わせてほほ笑みました。
コリンとコリンのお父さんに、明るくわらいにあふれる毎日がもどって来ました。
それから メリーもジッコンも、ますます仲良く幸せにくらしました。
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