にごりえ/樋口一葉<あらすじ 要約>

にごりえ/樋口一葉<あらすじ 要約>

樋口一葉は24歳という若さで亡くなくなり、作家人生はたったの4年程度でしたが、彼女は女性が封建社会に縛られることに対する悲しみを取り上げ、独特で新鮮な作風の持ち主でした。

1900年前後に書かれた樋口一葉の簡明な文体は リアルな描写をする女性が少なかったため、作品の構成力の高さとともに彼女の作風にも注目されました。

ストーリーとして、この物語の最後には お力と源七が死体となって発見されますが、それが源七の殺し(無理心中)だったのか、それともお力も源七と同じ気持ちで死ぬことに同意していたのかは文中からは わかりません。

特にお力の源七に対する心情は文中に 出てこないため、結城と源七とお力の人間性から判断するしかありません

これが にごりえ が難解作といわれる理由であり、また読み応えのある理由でもあります。人間らしく生きようと努力する主人公の悲惨な運命をドラマチックに描いています。

ぜひ皆さんも一度は にごりえ を全編読んでみてください。
にごりえは1895年の作品ですが、文章は簡易で非常に読みやすいので中学生にもおすすめです。

 

<にごりえ/樋口一葉>の主な登場人物は3人です。

1、主人公であり娼婦の   お力(りき)

2、お力のかつての上客   源七(げんしち)

3、お力の今の上客   結城(ゆうき)

にごりえ/樋口一葉

 

<あらすじ 要約>

お力のかつての上客 源七

主人公の お力 は銘酒屋 菊の井 で酌婦(しゃくふ 今の娼婦に近い)
として働いていました。お力は美人で若く、客をとる腕がよかったため菊の井の一枚看板となっていました。
お力は仲間の酌婦たちから悪口を言われることもありましたが、実際に付き合ってみると案外やさしく、
同性からも好意をもたれていました。
お力にはかつて蒲団(ふとん)業を営んでいた 源七 という馴染み客がいました。しかし源七は
お力に入れ込みすぎて財産を使い果たし、お力と別れてからはすっかり落ちぶれてしまいました。
今は土木工事の手伝いをして妻子を養っているそうです。お力にしても、仲間が源七の話をすると
もう忘れたなどとうそぶき、道行く男に声を掛けてはお客を探し回っていました。

 

お力の今の上客 結城

ある日、お力は 結城朝之助 という上等な客と出会います。
結城は会ったその日からお力に興味を示し、彼女のことをあれこれ聞き出そうとします。
しかし、お力ははぐらかすばかりで自分のことは一切語りませんでした。
しばらくすると、結城は週に何度もお力を求めて菊の井に通うようになりました。
お力の方も結城を気に入っているらしく、少し足が途絶えれば手紙を出したりもしました。
酌婦仲間たちは いい男をつかまえた とお力をはやし立てました。

 

源七の再来とお力

ある日、かつて別れたはずの源七がお力を訪ねてやってきました。
源七は未だにお力のことが忘れられず座敷までやってきたのでした。
しかし、お力は源七に会おうとはせず、結城のことばかりが気になっていると自嘲します。
実はお力もまた寂しく心に闇を抱えた人間でした。
ある時、お力はお盆でにぎわう座敷の中で、突然町へ飛び出し自暴自棄になってしまいます。
顔には白粉(おしろい)を塗りたくり、町ゆく人々からは白鬼だと呼ばれます。
こんな人生が果たして本当に自分の一生なのだろうかーとお力は発狂しそうになりながら町を放浪します。
そんな時、さまようお力を見つけ呼び止めたのは結城でした。
お力は結城にこれまでの隠していた自分の過去を明かします。
お力の家は貧しく、父も祖父も変わり者だといわれ死んでいきました。
そして自分も7つの頃から狂ったような感覚があり、
自分の家系はおかしいのだから仕方がない と寂しくお力は笑いました。
結城はお力を励ましますが、お力はうちしおれるままでした。

お力の心の先は

その頃、源七はお力への恋慕が原因でもめていました。
源七の妻は 離縁だけはお許しを と源七に泣きつきますが、源七は聞き入れず、
ついに妻は子供を連れて家を出て行ってしまいました。
お盆を過ぎて何日かたったある日、町を出ていく2つの棺がありました。
お力のために仕事も家族も失った源七はお力を刺殺し、自分は切腹したのでした。
ある者は つまらぬやつに見込まれたお力はかわいそうだ といい、
またある者は お力が合意の上で死を選んだのだ といいました。

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