蟹工船/小林多喜二 <あらすじ、要約>

蟹工船/小林多喜二 <あらすじ、要約>

 

蟹工船で働く労働者たちは過酷な労働を強いられていましたが、ロシア人に救助された船員をきっかけに共産主義を学びます。
そして、団結してストライキを行いますが、結局は政府の手によって葬られてしまう。

蟹工船 は資本主義の矛盾を痛烈に批判し、作品が発表された1900年代前半には一部で問題作品とされました。
実際に作者の 小林多喜二 は革命運動家として政府に逮捕され、拷問によって虐殺されています。

未発達の資本主義において 搾取が異常なことは確かでした。
そんな現代の日本の資本主義にも警鐘を鳴らすという点で、現在 蟹工船/小林多喜二 は高く評価されています。

この作品は1929年に発表されたものですが、蟹工船 が描く 労働者の苦悩 と 資本家の傲慢さ を味わえば共産主義がすべて間違っているとはいえないです。

ここ数年 若者に ベストセラー本で返り咲いた 蟹工船 は、プロレタリア(労働者)文学の傑作を通して、資本主義の光の影を考えさせるものです。

読みやすい作品なので中学、高校生にも お勧めです。
この機会に学生たちはこれからの社会のことを、社会人の方は社会の構造と矛盾について考えてみる機会としてください。

 

<蟹工船/小林多喜二>の主な登場人物は2種類です。

1、蟹工船で働く   労働者

2、労働者を指揮する   資本家

 

<蟹工船/小林多喜二> <あらすじ 要約>

過酷な労働で働く漁師たち

おい、地獄さ行ぐんだで!
蟹工船 博光丸 に乗り込む漁夫(漁師)達はそう言いながら函館の町をみていました。
寒風吹きすさぶ大海を蟹工船はオホーツク海へと進み、
北洋やソ連の領海を侵犯しては漁を行い巨利をむさぼっていました。
蟹工船で働く労働者たちには過酷な労働条件が強いられ、非人間的な扱いを受けていました。
漁夫たちの 巣 には薄暗い中に漁夫が収容され、さらに吐き気のしそうな臭いが立ち込め、
そこはまさに 糞壺(くそつぼ) でした。
漁夫たちは糞壺で4カ月間生活しなければなりませんでした。
雑夫(ざっぷ)の中には14~15歳の少年ばかりがおり、彼らは田舎から出稼ぎに来ていました。
また、蟹工船の中には騙されて東京から連れてこられた学生たちもいました。
蟹工船に乗せられた労働者は300人で、いずれも想像を絶する過酷な条件下で働かされていました。
北海道の冬の海は荒く、凍える寒さが刺し込んできます。
蟹工船のリーダーである 監督 は鮭殺しの棍棒を持っては、彼らを大声で怒鳴り散らします。
蟹工船には8隻の 川崎船 という小型漁船を乗せていましたが、それらを船に縛り付けるのも漁夫たち仕事でした。
気を抜けば簡単に漁夫たちは波にさらわれてしまい、1隻の船よりも漁夫たちの命は軽かったのです。

命よりも金は大事

ある日、蟹工船と並んで進んでいた別の船からSOSが送られてきました。
船長はすぐにその船助け出そうと、操縦室に入ります。
すると監督が 誰が余計な寄り道をしろと言った といって制止し、沈没船を見殺しにしました。
監督が言い分では、船はちゃんと保険に入っているから沈没すれば得をする、ということでした。
さらに船を助ければ1週間は無駄にすることになるから認められないとー。
やがて船内に連絡が入ってきました。
乗組員425人、救助される見込みなしでした
船はそのまま沈没し、蟹工船の乗組員たちは自分の運命と重ね合わせました。

共産主義を学ぶ

ある日、監督は荒れる海へと無理やり川崎船を出させ、1隻の船が行方不明になりました。
3日後に船と船員は無事に戻ってきましたが、ロシア人に救助され助かったようでした。
彼らはわずか3日で 赤化(せっか 共産主義化すること) されていました。
救助された船員によって共産主義の考えが船内に広まっていきます。
働かない金持ちばかりがどんどんと富を得て、働いている労働者たちはどんどん貧乏になっている、
まさに共産主義の訴えは蟹工船の構造そのものでした。
同時に、資本家たちを団結してやっつける というストライキの理念も伝わっていきました。

資本家に立ち向かう労働者たち

蟹工船の労働は日に日に過酷さを増していきました。
糞壺では虫が湧き、女に飢えた漁夫たちは雑夫に夜這いをかけるありさまでした。
やがて皆の体が疲労で動かなくなっていき、全員の作業のスピードが落ち始めました。
全員がのろのろと仕事をしているため、監督も手の打ちようがありませんでした。
そしてある時、1人の漁夫が死体を監督がそのまま海に投げ入れたのをきっかけに、
これまでの悪行にたまりかねた労働者たちは立ち上がります。
船員たちは一致団結して監督や船長と対立し、闘争へと発展していきました。
強悪といえる船長たちであっても、船員たちの団結の力の前には屈しざるをえず、
ついに彼らの要求条項を飲みます。
しかし、そんな状況下でもまだ監督は落ち着き払っているのでした。
実は監督は事前に帝国の軍艦に連絡を入れていたのです。
やがて海軍の駆逐艦(くちくかん)がやってきて首謀者9人逮捕され、ストライキは弾圧されました。
さらに、前にも増して船員たちの労働条件は過酷なものとなりました。
帝国の軍艦は国民の見方などでは決してなく、金持ちの手先だったのです。
俺達には、俺たちしか、味方が無えんだね。
船員たちは初めて自分たちの本当の敵を知りました。
そして、再び立ち上がるのでした。

 

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