人間失格/太宰 治 <あらすじ、要約>

人間失格/太宰 治 <あらすじ、要約>

 

<人間失格/太宰治>は誰もが一度は耳にしたことがあるほどの有名作品です。

太宰治は 人間失格 の他にも、 富嶽百景(ふがくひゃっけい) や 走れメロス などの有名作品があります。
この 人間失格 という作品は太宰治の晩年の作品で、この作品が連載された年に彼は入水自殺します。

この物語の主人公、葉蔵(ようぞう)は、薄気味悪い道化師として表現されているため特異な存在に感じるかもしれません
葉蔵 は世の中に常に恐怖と不安を感じていて、何度も自殺を図りますが結局は死ぬことができません。

愛した女性だけが死に、結婚した女性は強姦され、酒とクスリにおぼれていきます。
なかなか現代人にとっては 心中 や クスリ漬け というのは現実味のわかない内容かもしれませんが、太宰治自身の人生とある程度 関連づけた物語だと考えると読みやすいかもしれません。
主人公は作者である太宰治自身で、昭和11年ころまでの実生活をもとに脚色された本です。

我々においても、相手に好かれるため振る舞い は日常的に行っているはずです。
嫌いな相手に笑顔を向けたり、気を使って嫌な仕事を引き受けたり など、誰もが 道化師 であるはずなのに、人間失格 の葉蔵はメンタルがあまりに弱かったために薬物におぼれ 廃人 となっています。

つまり、自分が道化であることを自覚し、それに苦悩し続けたからこそ葉蔵は 廃人 となったわけです。

一方で、無頓着な私たちは 正常 とされる人間であるわけです。
一体、自我に苦悩した葉蔵と、自己を見失いつつある現代の私たち どちらが本当の 廃人 でしょう。

主人公 葉蔵の日記には、第1~3までの3つに分けられていて、

第1の手記 —> 幼少期(小学生)

第2の手記 —> 青年期(高校生)

第3の手記 —> ~廃人

となっています。

<人間失格/太宰治>の主な登場人物は2人です。

1、ある男の日記をみつけた   私

2、物語の中心である人間失格の   自分(葉蔵 主人公)

<人間失格/太宰治のあらすじ>

 

人間失格/太宰 治 <あらすじ、要約>

ある男の手記

主人公の小説家である 私 はある手記(自分の経験や体験などを書いた日記)を見つけます。
私はその男の写真を3枚だけ見たことがありました。
1枚目は10歳前後の男の写真。
男は大勢の女性に囲まれ、首を左に傾けながら醜く笑っていました。
2枚目は高校か大学生のころの写真。
恐ろしく美しい学生の姿でした。
3枚目はひどく汚い部屋での写真。
男は部屋の片隅で火鉢に両手をかざし、彼の顔にはどんな表情も印象もありません
これから述べるのは、その男の手記です。

第一の手記  唯一の求愛行動は道化

自分は空腹というものを知りません。
子供の頃に一番苦痛だった時間は、自分の家の食事の時間でした。
なぜ1日に3度もご飯を食べるのだろうと考えたこともあります。
自分は裕福な家に育ち、周りからは幸せ者だと言われてきましたが、いつも不安と恐怖に襲われていました。
その不安と恐怖から逃れるために思いついたのが 道化(わざとおかしな行動をして周囲を笑わせたりすること)です。
道化は自分の最後の求愛行動で、自分がおかしなことをして家族を笑わせたりしていました。
しかし、自分の本性はお茶目とはかけ離れたものでした。

第二の手記  初めて愛した女性との自殺

自分は中学に入っても道化を続けていましたが、ある時 竹一 に道化を見破られてしまいます。
竹一はクラスで最も貧弱で勉強もできない人間でした。
そんな竹一に道化を見破られ、自分は毎日、不安と恐怖に襲われます。
それからは竹一をてなづけるため、しばしば彼の家に通いなんとか自分は平常心を保ちました。
自分は高校に入り、友人から酒とたばこ、売春婦と左翼思想を教わりました。
その頃は自分を好きでいてくれる女性が3人いて、その1人が銀座で女給(接待役)として働く ツネ子 でした。
ツネ子は自分と同じように金がなく貧乏くさい女でしたが、それゆえに親近感がわき、
自分に生まれて初めての恋心が芽生えました。
ある日、ツネ子が 死 という言葉を口走ります。
ツネ子も人間としての営みに疲れ切っているようで、自分も世の中への恐怖やわずらわしさを感じていました。
私はツネ子の提案に気軽に同意し、その夜、鎌倉の海に飛び込みました。
そして、ツネ子は死に、自分だけが助かったのです。

第三の手記  飲酒とモルヒネ、病院送り~ 人間失格

鎌倉でのツネ子との心中未遂により、自分は高校を退学させられます。
その後、別の女性(シヅ子)とその娘(シゲ子)と暮らし始めますが、飲酒の量が次第に増えていき、
このままでは自分は彼女らをめちゃくちゃにすると思い、そこから逃げ出しました。
逃げ込んだバアで17、8歳の処女であった ヨシ子 と出会いました。
ヨシ子は自分に酒をやめるよう忠告し、自分は 酒をやめたら僕のお嫁になってくれるかい? といい、ついには彼女と結婚しました。

そして、ある事件が起こります。
忘れもしない蒸し暑い夏の夜のこと。
うちによく出入りしていた商人がツネ子を犯している光景を自分は見ました。
自分はヨシ子を助けることも忘れ、ただただ、その場に立ち尽くしていました。
その後、自分は睡眠薬を飲んで自殺を図りました。
しかし、またしても死ぬことはできませんでした。
今度は酒の代わりにモルヒネに手を出すようになりました。
そして今度こそ死のうとした時、引き取り人であった ヒラメ が現れ、脳病院に連れていかれました。
今はもう自分は罪人などではなく、狂人でした。
人間、失格。
もはや自分は、完全に人間ではなくなりました。
自分は今年で27歳になりますが、めっきり増えた白髪のために、周りからは40歳以上に見られます。

 

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